第298号【言葉のことはじめ(方言と外来語)】

 あけましておめでとうございます。今年もみろくや「ちゃんぽんコラム」では、いろいろな長崎の魅力を探してお届けいたします。本年もよろしくお願いいたします。さて、今年最初のテーマは「言葉」。方言や長崎由来の言葉などをご紹介します。


 さて、お正月、故郷へ帰省された方々は、迎えてくれたご家族や友人たちと、楽しいひとときを過ごされたと思います。ある方は、故郷の方言を思いきり使って会話をしていると、温かい気持ちになり、素にもどるようだとおっしゃっていました。方言はその地域の風土の中で生きる人々が長い間に育んだ言葉。人々の感覚や考え方が言語化されているといいます。端正に整えられた共通語よりも親しみを感じたり、素にもどったりするのは、より人間味のある言葉だからなのでしょう。




 ところで、旅先などで土地の人が何を言っているのか全くわからなくて困ったことはありませんか?土地のお年寄りが話す筋金入りの方言は、まるで外国語。カルチャーショックをうけますよね。話が少しそれますが、外国語と言えば、英語、韓国語、中国語などいろいろありますが、そういった国や民族の言語は、世界におよそ6000ないし7000もあるそうです。しかし、今、その内の90~95%が、民族や話し手の減少などによって絶滅寸前あるいは消滅の危機に瀕しているとか。言語にはその国や民族の文化が宿っているだけに、1つの言語が消えることは人類にとって大きな悲劇だと学者さんは言っています。日本でいえば、アイヌ語も消滅の危機が懸念されているそうで、近年アイヌ語を残そうとする活動が展開されているようです。




 絶滅危機の問題は、動物や植物の世界だけでなく言語の世界にも起きていたのですね。言語も多様性がある方がいい、専門家でなくても、そう思う人は多いのではないでしょうか。日本語の場合、全国津々浦々、たくさんの方言を擁していますが、方言を大切にすることは、地域の人々や文化を大切にすることにほかならず、最近では、方言が見直されているそうです。「おいしい」は、長崎では「うまか」、青森では「め」、岩手や秋田、山形は「んめぁー」島根は「んまい」、宮崎や鹿児島では「んめ」沖縄は「まーさん」。「大きい」は、長崎や福岡、佐賀、熊本では「ふとか」、同じ九州でも宮崎では「おっこね」、福島は「ずなぇー」、静岡は「いかい」、東京は「でっけー」、福井は「いけー」です。方言は基本的に「話し言葉」。実際に現地で耳にしたいですね。


 長崎県・五島では驚いた瞬間に思わず「あっぱよ」といいますが、同じ長崎県でも他の地域にはない言葉です。こんなふうに津々浦々で独特の言葉が見られ、同じ言葉でも微妙にイントネーションやニュアンスが違ったりします。本当に方言って不思議で面白いものですね。


 お次は、長崎ゆかりの外来語について。古く中国、ポルトガル、オランダとの貿易港として繁栄した長崎には、さまざまな海外の文物が持ち込まれました。同時にやって来た外国語も長崎人の耳が聞き取り、訳して生活に溶け込んでいったのです。中国ゆかりでいえば、たとえばトンスイ(湯匙)。中華料理で使うチリレンゲのことですが、長崎ではトンスイと呼ぶ人がまだまだいらっしゃいます。他には、サジ(茶匙)、ジタバタ(七転八倒)、ヒョウキン(剽軽)なども中国渡来。すっかり日本語として定着しています。




 約400年も前の南蛮貿易時代にもたくさんの言葉が伝わりました。カステラ、カルタ、コーヒー、トタン屋根のトタン、パン、ボタンなど。オランダからは、おてんば娘のオテンバ、苦い薬を飲む時に欠かせないオブラート、ガス、コップ、コルク、ポンプなど。海外との交流で新しい言葉にあふれた当時の長崎は、おおいに人々の心を刺激したはず。こうした言葉の面からも、当時のこの街の豊かさ、華やかさが想像できるようです。







◎参考にした本/世界の先住民族10~失われる文化・失われるアイデンティティ(明石書店)、長崎事典~風俗・文化編(長崎文献社)、いろんな方言がわかる本(メイツ出版)

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