第291号【平成19年長崎くんちの見どころなど】
日中はまだ真夏の日射し。とても暑いですが、吹く風は意外に涼しく、大気も秋らしく澄んでいます。高台から長崎港をのぞめば、視界くっきり、気持ちのいい眺めです。
さて、長崎の秋といえば諏訪神社の大祭「長崎くんち」です。10月7、8、9日の3日間行われます。今年の奉納踊を受け持つ「踊町(おどりちょう)」は、興善町(こうぜんまち)、八幡町(やはたまち)、西濱町(にしはままち)、万才町(まんざいまち)、銀屋町(ぎんやまち)、五嶋町(ごとうまち)、麹屋町(こうじやまち)の7ケ町。各町の「傘鉾(かさぼこ)」や、奉納踊の見どころなどをご紹介します。
興善町の傘鉾の飾(だし/傘鉾上部の飾り)は、烏帽子と神楽鈴、そして鮮やかな紅葉が配されています。垂れ幕には五彩の雲と、金糸で三社の紋がほどこされ格調の高さが感じられます。奉納踊は「石橋(しゃっきょう)」。能に由来した舞で、獅子が長い毛を振りまわす様は圧巻です。
八幡町は、傘鉾も奉納踊も「弓矢八幡」に因んだものです。長い弓と矢立てがスマートに配された傘鉾の飾は、江戸時代、この町に住んでいた長崎三大文人のひとり、木下逸雲(きのしたいつうん)のアイデアだとか。奉納踊の「弓矢八幡祝い船」では、勇ましい引きまわしが見られます
華やかさで特に目をひくのが西濱町です。中国姑蘇十八景図と詩文を長崎刺繍で施した贅沢な傘鉾の垂れ幕。黒い輪の部分には、明治12年に来日したスウェーデンの北極探検隊長による英字の町名が記されています。奉納踊は豪華な龍船。2階部分は本踊りの舞台にもなっています。ときに煙りも吐く龍船。その勇壮な引きまわしは必見です。
万才町の傘鉾は、深紅の大きな盃が目印です。盃の「萬歳」の金文字は、長崎平和記念像の作者・故北村西望氏百歳の時のもの。奉納踊は長崎のわらべ歌や民謡などを組み合わせたノリのいい曲で「本踊(ほんおどり)」を披露。三味線の演奏や踊子さんたちのあでやかな舞いなど伝統とモダンを感じる出しものです。
銀屋町は、今年初め念願の旧町名が復活。そんな記念すべき年ということもあり、くんちにかける思いもひとしおのよう。傘鉾の飾は、金の鯱(しゃち)。奉納踊りは、鯱を台座に載せた太鼓山を、屈強な男たちが力一杯宙へ舞い上げます。
五嶋町の傘鉾の飾は、虫籠を中心に、芒と白い菊が配され風雅な趣です。奉納踊は、前回(7年前)から出している「龍踊」です。龍を翻弄する玉使いの動きや龍の尻尾の扱いなど、のびのびとして楽しく、五嶋町「龍踊」の個性が感じられます。
麹屋町の町名は、かつて大きな泉や井戸があり、水が豊富で麹屋さんが多かったことに由来するとか。傘鉾の飾には、麹屋町の名を記した麹ぶたが付けられています。奉納踊では大きな川船が登場。根曳衆がゴロゴロと大きな地響きをたてて引きまわす様は感動的です。
さて、長崎くんちと同時に楽しんでいただきたいのが、シーボルト記念館(長崎市鳴滝2―7―40)で開催中の『シーボルトと長崎くんち展』(平成19年10月14日迄)です。「諏訪神社と神事の歴史」をはじめ、シーボルトやケンペルなど江戸時代に、長崎くんちを西洋に紹介した外国人の記述など、貴重な資料を展示しています。興味深いのが、初公開資料の鎧と兜(黒漆塗紺糸威二枚道具足)です。長崎奉行所の御貸具足で、明治元年の長崎くんちでお神輿の行列に使用されたと伝えられています。
また、各町の傘鉾を描いた絵はがき(画:野田照雄氏/7枚1組1,000円・税込)や各町の出しものに因んだ図案が描かれた「長崎くんち手拭いセット」(7本・化粧箱入り/2,500円・税込)など、今年の長崎くんちグッズも販売されています。中でも「長崎くんち手拭いセット」は人気商品。数に限りがありますので、お早めにお求めください。
◎ 取材協力/
長崎歴史文化協会
シーボルト記念館 TEL095―823―0707
長崎伝統芸能振興会(長崎商工会議所内)https://nagasaki-kunchi.com/#about