第286号【絶滅危惧種と出会う、黒崎永田湿地自然公園】
爽やかな自然の空気に触れて、たまった疲れやストレスを解消しませんか。今回、ご紹介するのは、気分がリフレッシュするネイチャー・スポット「黒崎永田湿地自然公園」です。ここは、のどかな湿地の自然に親しみながら、植物、昆虫、野鳥をウオッチングできる公園で、トンボに関しては日本有数の生息地と評価されています。また、ミズカマキリ、ニホンアカガエル、デンジソウなど長崎県で絶滅のおそれの高いいろんな生物に出会えるのも魅力です。
長崎駅から路線バスで約1時間。「黒崎永田湿地自然公園」は、西彼杵半島の西海岸側に位置する長崎市外海地区にあります。地元サーファーが集う黒崎海岸そばの「永田浜(ながたはま)バス停」で下車。そこからわずか3分ほど歩けば、海辺の景色が、緑豊かな里の風景に変わり、9.8ヘクタールの「黒崎永田湿地自然公園」が姿を現します。
梅雨の真只中ということもあり、公園には青葉が生い茂り、生気がみなぎっていました。目立ったのは、ガマやヒメガマなど背丈のある植物です。また、白く小さい花が涼し気なセリの群生やミズオオバコの花も満開。湿地の植物たちはすっかり盛夏の装いでした。
公園の入り口には、木造の「休憩所」があり、公園の成り立ちや生息する生物について写真付きの説明板が掲げてありました。うれしいことに、公共施設にありがちな施設案内のAV機器やジュース類の自動販売機などは一切ありません。近くの車道も交通量が少なく、おおむね静か。自然の音に耳を澄ますことができました。
園内には木道が通され、敷地全体をめぐりながら、植物や生物を間近に見たり、触れたりすることができます。木道に足を踏み入れると、いきなり、草むらからバサバサッとキジが現れ、「ケーン、ケーン」と鳴きながら飛び去っていきました。ここでは、モズ、ヒクイナ、サギ類、ツグミ、オオジュリンなどの野鳥とも出会えるとか。さらに、足を進めると、草むらの陰から「モー、モ」というウシガエルの鳴き声も聴こえてきました。
平成15年の春に開園した「黒崎永田湿地自然公園」は、湿地の生物や生態系を保全する目的で、荒れ地となっていた水田の跡地を整備したものです。今、全国各地で荒れた休耕地を再生・活用させようという動きがあるようですが、ここも、そのような時代の流れで生まれたようです。
日本の原風景でもある水田。人との関わりを強く受けたそのような土地、自然は、その後も人による適度な管理が必要になるそうで、放置していると、乾燥化が進みどんどん荒れていくといいます。ここも、整備する際には、なるだけ人工的にならないように配慮する中で、数カ所に池を設けてトンボ類の生息に適した環境をつくり、またいろいろな植物が生えるように、池の深さに変化を持たせるなどの工夫をしたそうです。そうした試みが功を奏し、当初はヨシやガマ類など少ない種類の植物で大部分が占められていたのが、今では、いろいろな生物が入り込み、多様性のある自然に変化し続けています。
この公園内を毎日ウオーキングしているという近所のご婦人は、「公園の表情が季節ごとに大きく変わるので、面白いですよ」とおっしゃっていました。人が、心ある手を加え、緑豊かな里の風景に溶け込んだこの公園。本当は、手つかずの自然というのが理想なのかもしれませんが、こんなふうに、人間が自然と仲良くなるために働きかけて、いい関係を生み出すというやり方も「あり」なのかもしれません。
◎黒崎永田湿地自然公園/開園時間9:00~17:00(入園無料)
◎取材協力/外海町行政センター(建設課)0959-24-0211