第282号【感動の長崎帆船まつり】
今年のゴールデン・ウィークは、いかがお過ごしでしたか?どこもイベントシーズンならではの多彩な催しで大にぎわいでしたね。初夏の気配を感じる日射しや風も気持ち良く、家の中でじっとしていても、開放的になった世の中の気分が伝わってくるようでした。
長崎港ではすっかりこの時期の風物詩となった「2007長崎帆船まつり」(4/26~30)が華やかに開催されました。毎年、各国の帆船が集うこのおまつりは、帆船の美しさや海のロマンを肌で感じる素敵な催しがいっぱい。今年は5日間の期間中、28万7千人(長崎経済研究所調べ)が長崎港に繰り出しました。
今年の帆船まつりには、「日本丸」、「海王丸」、そしてロシアの「パラダ」という、総トン数2,000t以上、マスト高50mの大型帆船が3隻。さらに韓国の「コレアナ」、大阪の「あこがれ」、佐世保・ハウステンンボスの「観光丸」、そして長崎市所有で、古い中国の木造船を復元した「飛帆(フェイファン)」の全7隻が集いました。
帆船まつりの初日の見どころは、長崎港の入り口にかかる女神大橋の下から次々に姿を現す「入港パレード」です。今年の天気は花曇りで、長崎港も一面厚いもやがかかっていましたが、真っ白なもやの中から姿を現した帆船の姿は、幻想的な雰囲気を漂わせ、晴天の時とは違う表情を楽しめました。
帆船たちは、長崎港の「長崎水辺の森公園」周辺の岸壁に停泊。大勢の市民や観光客が帆船を見上げる中で目立ったのは、年輩の男性たちです。じっと帆船を眺める視線の熱いこと。ご自身も乗組員になって大海原をいく様子などを想像しているのでしょうか。「日本丸」や「海王丸」に関しては、第二次大戦後、海外在留邦人の帰還輸送に携わったという歴史もあり、当時に思いを馳せた方もいらっしゃったに違いありません。
帆船まつりでは、船内一般公開、体験クルーズなど、帆船とその乗組員、市民が交流を図る催しもいろいろありました。「パラダ」の一般公開では、ロシアの海技学校や水産学校の若い実習生たちが船内を案内してくれました。広いデッキは心地良く、各所に巻かれたロープは、太くてとても強靱そう。マストを真下から見上げれば、無数のロープが複雑に渡りあっていて、遠目から見た時のシンプルな帆の姿は細やかなロープの組みや作業で成り立っていることを実感しました。
帆船の乗組員(実習生)たちが力を合わせて白い帆を一斉に広げる「セイルドリル」は、日頃の練習の見せどころです。帆の木組みに軽やかに登ってキビキビと作業するその姿には、海の男としての自覚が感じられ、とても爽やかです。この帆船まつりに長年関わっていらっしゃる湯川武弘氏(帆船海王丸クラブ・東京の元幹事)は、「船上ではチームワークがとても大切です。帆を上げる時、一人でも手を抜けば、上がり具合に現れてすぐにわかるのです。実習生たちは、船上でのさまざまな作業を通じて、自分の力を精一杯発揮することの大切さやチームワークの重要性を学ぶのです」とおっしゃっていました。
帆船まつりでは、毎回参加してくれる帆船との年に一度の再会を待ち望む人も増えています。「出会いを重ねることで、帆船や海への興味が深まってくるはず。そういう方々が増えると私たちもうれしいですね」と話す湯川氏は、市民らの帆船に関する疑問や質問に快く応じていました。
帆船まつりの最終日。出航の際にマストに登り「ごきげんよう」と手をふる実習生の姿や、帆船たちが互いに汽笛を鳴らして別れを告げる光景は、人生の中のさまざまな別れとも重なって思わず涙ぐむほどです。入港から出航まで、感動満載の帆船まつり。今年を見逃した方は、ぜひ、次回お出かけください。
◎ 取材協力:長崎帆船まつり実行委員会
TEL095-829-1314