第265号【長崎・夏の食のよもやま話】
旅に出た時の楽しみのひとつが、商店街やスーパーの食品売り場を見て回ること。その土地ならではの食材やお惣菜に初めて出会うと、「まだまだ知らないものがあるんだなあ」、「日本って広いなあ」と、何だかうれしい気分になります。
長崎のスーパーでは普通に売っているけれど、他ではほとんど見かけないもののひとつに、赤や緑の棒状のはんぺんがあります。それを短冊状に刻んで、ちゃんぽんや皿うどん、野菜炒めなどの具材として使います。このはんぺんを入れるだけで彩り豊かなおいしさに。長崎人の食卓には欠かせないものです。
長崎から横浜へ引っ越した親戚のおばさんは、このかまぼこを探し回ったけど、なかなか見当たらないとボヤきます。ようやく大きなデパートの長崎物産のコーナーで見つけたそうですが、「長崎じゃ、すぐ手に入るのに…」と残念そうです。
他の地域から長崎に移り住んだ方たちも、やはりこのはんぺんをめずらしがります。そしてこの他にも、日常の長崎の食に少なからずカルチャーショックを受けるのです。
子供の頃、東京から引っ越して来た友人は、今でも忘れられない出来事があります。夏、長崎のおばあちゃんちで、おそうめんをいただいた時のこと。大皿に盛られた「そうめん」を各人が適量を取り、つけづゆにつけて食べはじめたのは良かったのですが、そのつけづゆというのが、砂糖で甘辛く仕上げたゴマダレなのです。ほうれん草のおひたしなどで使うアレです。「こんな甘いのをつけるの!?」かつおだしでみりんと醤油で味付けした薄茶色のつけじるしか知らなかった友人は、一瞬唖然としたそうです。
ゴマダレを適宜おそうめんにかけていただく。長崎の全ての家庭がそうだとはいいませんが、「うちはそうやって食べるわよ」という方を何人も知っています。
夏の食卓といえば、長崎は海産物が豊富ですから、県内各地から水揚げされたミナ(貝)やサザエ、アワビも店頭をにぎわします。「本当にいいものは東京の築地に行ってしまう」と聞いたことがありますが、それでも、新鮮でおいしい魚介類は豊富にあり、気軽に手に入ります。ありがたいことです。
先日、お盆休みを利用して実家のある五島列島に帰省した友人に電話を入れたところ「今、サザエ採りに行ってますよ」とおうちの方。近くの海岸の岩場で素潜りで採っているとか。後で聞けば、その日のメニューは、サザエごはん、サザエの刺身、サザエの壺焼きとサザエづくしだったそうです。ああ、うらやましい!
大村湾でとれる「タイワンカザミ」という種類のカニも長崎の夏のおいしいもののひとつです。名前はタイワンですが、もともと日本にいる種類だとか。タラバガニなどに比べれば小ぶりですが、身もミソも上品なおいしさ。ズワイガニやタラバガニよりこっちがおいしいという人もいるほど。お味噌汁でいただくと格別です。
今回は、長崎の夏のおいしいものをいくつかご紹介しましたが、あなたのお住まいの町にも、おいしいものがいろいろあるはず。見慣れた食材が、意外にもその町独特のものだった、ということもあるかもしれません。ちょっと気にして見てみませんか?