第264号【長崎半島・三和町の貴重な自然】
暑中お見舞い申し上げます。冷房のきいた部屋で長く過ごすと、体調をくずしがちです。野菜や魚介類がたっぷり入った熱々のちゃんぽんを食べれば、汗をいっぱいかいて、スカッとします!ぜひ、お召し上がりください。
今回は、夏休み中ということで、長崎の路線バスで気軽に行けるネイチャースポットをご紹介します。場所は長崎市三和町川原(かわら)地区。三和町は昨年1月に長崎市と合併したばかりの町です。長崎市の市街地から、南西に伸びた長崎半島の中間くらいに位置しています。
路線バスで、長崎駅から長崎港沿いを行き、女神大橋の巨大な足もとをくぐり抜け、山あいの風景を楽しみながら目的地まで約40分。目の前に天草灘が広がるのどかなロケーションの川原地区に到着。降り立った「川原公園前」のバス停では、潮の香がまじる心地よい風が吹いていました。
バス停から徒歩で2~3分ほどのところに、ひとつめのネイチャースポット、淡水湖「川原大池」があります。広さ13ヘクタール、周囲は約1.9キロメートル、最も水深の深いところは9メートルあり、周囲は樹木におおわれています。湖畔には木の歩道が整備され、美しく静かな風景を眺めながら歩けば、まるで高原の避暑地に来たかのような気分です。
森を思わせるほど豊かな樹木はクス、ハマボウ、そして貴重されるハマナツメなど。「川原大池」一帯は、県指定天然記念物の樹林地帯になっていて、その自然はしっかり守られていました。あたりにはアゲハチョウやトンボが飛び回り、池の中では、数種類の淡水魚たちがのびのび泳いで気持ちよさそうです。
周囲はたいへん静かで、聴こえてくるのは、隣接する海の波の音と、鳥の鳴き声だけ。ここでは、カワセミやマガモ、そして環境庁のレドデータブックにも載っているミサゴなど80余りの野鳥が確認されているそうです。この「川原大池」を含む周囲は公園として整備されていてキャンプも楽しめます。そばには海水浴場もあり、夏のレジャーにはうってつけの場所です。
さて、川原地区ふたつめのネイチャースポットは、「川原大池」からほど近いところにある、「蛇紋岩の円礫浜(じゃもんがんのえんれきはま)」です。何だかとてもむずかしい名前です。蛇紋岩とは「かんらん岩」が水を含んで変質してできた岩だそうで、その礫(石ころ)が、浜辺を形成しているのです。石の大きさは手のひらサイズ。色は緑がかった濃紺で、波にもまれたせいか、だ円形でとてもツヤがあります。このような浜辺は日本で珍しく貴重なものだそうです。
地元の方によると、昔はこの地域の海岸一帯に広がっていたけれど、護岸工事で整備されるうちに、範囲が狭くなったとか。このような浜が、長崎半島の中で、この地域にだけ見られる理由は、全くわからないということでした。また、蛇紋岩の石ころは太陽の熱を吸収して、火傷しそうなほど熱くなるので、泳ぐ時は、みんな石の上を急いで走り抜けて海に入ったものだと、懐かしそうに話をしてくれました。
「蛇紋岩の円礫浜」は、波が引くたびにコロコロととても心地いい音がします。それにしても、なぜ、この地域にだけ、このような石の浜ができたのでしょうか。夏休みの宿題ができたなあと思いながら、帰路に着いたのでありました。