第262号【涼を求めて、雪浦へ】
暑さをしのぐなら、やっぱりクーラーよりも自然の涼しさの方がいいですよね。ということで今回訪れたのは、長崎県西海市雪浦です。雪浦は、西彼杵半島の西側の海岸を行く国道202号沿いにある地域。「つがね落としの滝」や「岩背戸渓谷(いわせとけいこく)など避暑にぴったりのスポットがあることで知られています。
ちなみに国道202号は、通称「サンセットオーシャン202」と呼ばれ、夕日が美しいことで知られる人気のドライブコース。東シナ海、五島灘をのぞむ美しい景色を満喫しながら、雪浦に到着しました(長崎市から車で約1時間)。
雪浦は、青松白砂の海岸、渓谷や滝を擁する山、そして長さ約16キロメートルの大河・雪浦川など、豊かな自然に恵まれた地域です。家々は雪浦川の流域に軒を連ね、海岸近くに小さな集落を形成しています。「つがね落としの滝」は、そこから車で7分ほど山あいへ入ったところにあります。
「つがね落としの滝」の「つがね」とはカニのことで、このあたりで育ったつがねが滝に落ちることからこの名が付いたとか。滝の高さは約20メートル。しぶきをあげて勢い良く落ちる水の爽快さといったらありません。夏場、家族連れが多く訪れ、ソーメン流しなどで賑わうそうです。
「つがね落としの滝」のすぐ上流にある「岩背戸渓谷」も気持ちの良いところでした。木製の吊り橋を渡り、うっそうと茂る森林の合間に降りると、手付かずの渓流がありました。ゴツゴツとした岩場や石ころの上を流れる生まれたての水。その清らかな感触に夢中になっていると、煩雑な日常を忘れ、体中の細胞が目覚めるようです。
雪浦地区を囲むようにしてある山々には、この他、長崎市の水がめ・雪浦ダムもあります。そのダム湖の上流は公園が整備され、夏場はキャンプや水遊びに訪れる人が多いそうです。
雪浦には、その美しい自然をいつくしみながら、野菜づくりをしたり、創作活動をするなど、エコ&スローに生きる人々がいました。毎年、ゴールデンウィークの頃に開催されるイベント「雪浦ウィーク」は、そういった方々との出会いを楽しめる催しで、郷土料理や野菜、陶芸・絵画、環境に優しい製品の製造・販売など、多彩な分野で活動している方々とじかにふれあい交流ができるそうです。
たとえば、「雪浦ウィーク」の事務局で画家のタナカタケシさんは、10年ほど前、この地の自然や温かな人情が気に入り、引っ越して来た方。築100年の民家にアトリエを構えてお住まいです。竹炭工房「雪炭窯」の浅田洋子さんはご主人と共に、繁殖力が強い地元の孟宗竹を伐採し、手間ひまをかけて上質の竹炭や竹酢液などをつくっています。
九州にあって、「雪浦」という涼し気な地名の由来は定かではないようですが、ウミガメが産卵をするという広々とした砂浜は、雪のような白さです。もしや、これが地名の由来では?と思ったのでした。
◎取材協力/雪浦ウィーク事務局(タナカタケシ様)、竹炭工房「雪炭窯」
◎参考にした本/大瀬戸町郷土誌(大瀬戸町)