第261号【世界でも珍しい南有馬リソサニウム礁】
島原半島の南東部に位置する南島原市南有馬町。ここに、世界でも三ケ所しか確認されていないという珍しい白州(しらす)があります。今回は、島原半島の活性化をめざす民間団体「NPO法人がまだすネット」主催のイベント、『白州への上陸』に参加。自然の不思議にふれる体験をしてきました。
南有馬町は、「島原の乱」の舞台となった原城跡がある町として知られています。原城跡は有明海に面した小高い丘の上にあり、白州はその丘の海岸から300メートルほど沖合いに見られるといいます。
5月の大潮の日に行なわれた『白州への上陸』。あいにくの雨天にもかかわらず、長崎県内各地から8名の参加者が集まり、南有馬の漁港から、船で沖へ向かいました。ふりしきる雨の中、慣れない船にしがみつく参加者は、さながらネイチャーアドベンチャー。港を出ると右手には緑におおわれた原城跡の丘が見え、左手には海原が広がっています。この海上のどこかに白州があるなんて誰も想像ができません。
船はどんどん沖合いへ。7~8分ほど経ったでしょうか、目をこらして周囲を眺めると、うっすらと土色をした海面が見えてきました。「まさか!」「ここは、海の上よ!」などと参加者が驚いているうちに、船はおもむろにエンジンを止め、案内役の船頭さんが下船。足首くらいまで海水に浸かっていますが、そこには確かに白い砂浜のような景色が広がっているのです!
日本をはじめ世界各地に、干潮時になると潮が引いて島などへ歩いて渡れる場所があると聞いたことがありますが、この白州もそんな場所のひとつ。陸とは続いていませんが、干潮時に突如として海上に現れるのです。特に毎年5月頃にあたる旧暦3月の大潮の時は、干満の差が激しく上陸もしやすいといいます。かつて最干潮時には長さ800メートル、幅100メートルほどのひょうたんのような形の白州が現れていたとか。その形は海流の変化に応じて年々変化しているそうです。
世界でも珍しいと言われるのは、その白州の正体です。白やうす紫色をした小さな物体がたくさん集まって浅瀬を形成していたのですが、これは、リソサニウムという珊瑚によく似た水中植物で、ふつうは海底に見られるものだとか。大きいもので卓球ボールくらいでしょうか。この浅瀬(リソサニウム礁)を地元では古くから「白州の真砂(まさご)」と呼んでいるそうです。
リソサニウムをひとつひとつ見ると、形状は、まいたけ、しめじ、ブロッコリーを思わせます。地元の漁師さんでもある船頭さんによると、白いのは乾燥して死んでいるもの。うす紫色のはまだ生きているとか。海底から波の力で打ち寄せられているとおっしゃっていました。ちなみに、この一帯は、アラカブ(カサゴ)をはじめおいしい魚が豊富にとれるのですが、漁師さんの間では、この白州が安全な産卵場所になっているおかげだと、古くから言われているそうです。
白州に上陸した参加者はしばらく浅瀬を歩き回りました。小魚や小さなウニ、ヒトデ、ウミウシを確認。波が、陸側と沖側から打ち寄せているのもわかりました。わずか1時間ほどのネイチャーアドベンチャーでしたが、地球の息吹きを感じる楽しいひとときでした。
◎取材協力 NPO法人がまだすネット事務局