第259号【キビナゴ料理を作りませんか】

 ひと昔前までは、よく食卓にあがっていたのに、そういえば、最近あまり作らないなあと思う料理はありませんか?今回ご紹介するキビナゴ料理などは、そんなひとつではないでしょうか。


 ウルメイワシ科のキビナゴは、体長約7~9センチの小さな青魚。細く透きとおった身体に銀色の縞が入っているのが特長です。水産県・長崎では、一年を通して店頭で見かける大衆魚ですが、あたたかな海域に分布する魚なので、寒い地方では、馴染みがうすいかもしれません。旬は春から夏にかけて。産卵期を迎えたキビナゴが、外洋から大群で海岸の方へやってくる時期です。




 キビナゴの大群は、まるで全員が申し合わせたかのように隙間なく群れ、もうスピードで泳ぎながら一匹の巨大魚のような影をつくります。銀色の縞もいっせいにギラリと光って迫力満点。そうすることで、外敵から身を守っているのだという話を聞いたことがあります。


 五島列島の漁師さんによると、キビナゴは主に、海中に目のこまかい網を張って固定する「刺し網(さしあみ)」という漁法で捕るとか。キビナゴは、泳いできた勢いで網に刺さったり、からんだりして捕らえられます。


 長崎市内の魚屋さんをめぐってみると、長崎県内でも特にキビナゴの産地として有名な五島列島・福江島産を多く見かけます。お値段は、もちろんその日の漁獲量に応じてまちまち。旬のこの時期は、割合安く手に入ります。先日、買い求めた時は100グラム(15~20匹程度)70円でした。


 キビナゴは傷みやすいので新鮮なうちに調理して食べるのが原則です。刺身などは、淡白でクセのないおいしさ。最近では料理屋さんなどでしか食べる機会がありません。でも、家でも簡単に作れます。包丁は使わず、手で頭をとり、指で腹を開きます。中骨も尾から頭に向かって引くときれいにとれます。銀の縞を表にして身をくるりとまるめてお皿へ。さしみ醤油や酢みそなどでいただきます。




 以前、おばあちゃんの家でよく食べていた、キビナゴの煮付けを作ってみました。

1.キビナゴ(200~300グラム:2~3人前)を洗って水気をきる。ショウガ(適量)をせん切りに。

2.砂糖、醤油、酒(各適量)で味付けした煮汁を作り、キビナゴとショウガを入れて煮ます。

キビナゴは小さいので、火が通るのも味が染みるのも早いです。シンプルで懐かしい一品のできあがりです。




 おばあちゃんの家では、冬場、地元で「いりやき」と呼ばれるキビナゴ鍋もいただきました。材料は、キビナゴ、豆腐、白菜、大根、ネギなどを適宜。鍋に、醤油でうすく味付けした煮汁を沸騰させ、野菜を適量いれて煮る中、キビナゴを数匹づつ入れながらいただきます。ちょっと火がとおって色が少し変わった程度ですくうのがおいしい。骨もきれいにはずれます。


 他にはキビナゴの南蛮漬や、地元のお惣菜屋などでよく見かける長崎天ぷらもおすすめです。食卓を懐かしい空気で包むキビナゴ料理。新鮮なキビナゴが手に入ったら、作ってみませんか?







◎参考にした資料/「大日本百科事典5」(小学館)

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