第257号【出島の暮らしが見えて来た!】

 この春の長崎は、観光面での話題がとっても豊富です。3月には、長崎の歴史や文化など多彩なジャンルの知識に挑戦する、「長崎検定(長崎歴史文化観光検定)」が行われ、市民をおおいにまきこんで故郷・長崎への関心が高まりました。また、この4月1日から、日本ではじめてのまち歩き博覧会「長崎さるく博‘06」がスタート。10月29日までの7ケ月間の催しで、長崎の各所を楽しく歩き回れるメニューがたくさん用意されています。観光スポットをめぐるだけでは気が付かない普段着の長崎に出会えるとあって、参加者にも好評のようです。


 そして、さらに、長崎観光の中心的存在のひとつである、出島にもうれしいニュースがありました。出島ではかねてより19世紀初頭の姿をめざして復元事業が進められ、すでに「ヘトル部屋」(※ヘトルとは、オランダ商館長次席のこと)や「料理部屋」など5棟が復元されていましたが、この4月1日、あらたに「カピタン部屋」、「乙名(おとな)部屋」、「拝礼筆者蘭人(はいれいひっしゃらんじん)部屋」。「三番蔵」、「水門」の5棟が完成し、一般公開されたのです。




 復元された建物が並ぶ通りを歩けば、そこからオランダ商館員やチョンマゲの地役人がひょいと出てきそうで、ちょっとドキドキします。今まで、あまり知る機会のなかった出島での日本人の姿をはじめ、オランダ商館員たちの暮らしぶりも具体的に見えて来て、とても面白いのです。展示物も充実しており、その歴史の奥深さと魅力にふれていると、何度でも通いたくなってきます。



 

 さて、パワーアップした出島で、今回特にご紹介するのは、「カピタン部屋」です。建物の正面に設けられた鮮やかなライトグリーンの階段が目印です。ここは、カピタンと呼ばれたオランダ商館長の事務所や住居とされたところで、出島の中でもっとも大きな建物です。1階は、出島の歴史や生活に関する資料を展示したガイダンス的な場所。出島に行ったら最初に訪れるといいと思います。


 「カピタン部屋」の2階は、当時の生活空間が復元されています。商館員らが事務を行い、地役人と商談などをしたと思われる部屋や、朝夕の2回、商館員らが集まって食事をしたり、大名などが接待を受けたという35畳の大広間などがあります。細部まで気を配った和洋折衷の部屋の造りやオランダで買い付けたという絨毯、食器、家具などの調度品。当時さながらの臨場感あふれる空間に、出島の住人の表情までもが見えて来るようです。また、カピタン部屋は特にバリアフリーの工夫が施されており、車椅子の方もスムーズに見学ができるのはうれしいところです。



 

 「カピタン部屋」の裏手の狭い通りを隔てたところに建つ「乙名部屋」も興味深い建物です。乙名は、出島を監視する地役人で、出島に出入りする人や壊れたものをチェックすることなどが仕事でした。彼らが拠点としたこの建物は、長崎の町屋を参考にしたもので、純和風。まさに、時代劇で十手持ちなどが出入りする番所で、それらしき帳面や書類棚が設けられています。突然、そこに地役人が現れても、「ご苦労さまです」などと何の違和感もなく挨拶を交わせてしまいそうなほど、どっぷりと空間にひたれます。




 「乙名部屋」の2階の格子戸からは、カピタン部屋をのぞくこともできそうです。この近さなら、いろいろと通じ合うことも多かったのではないかとも思え、当時の出島の情景が、生身の人間を感じられるくらいに想像できます。ぜひ、お出かけください。



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