第256号【風光明美な大村湾を渡る】

 先日、高速船で大村湾をクルージング。大村湾は、県外の方々には「長崎空港」があることで知られています。まるで湖のように、穏やかな波をたたえるこの湾の広さは320キロ平方メートル。琵琶湖の半分くらいといわれています。湾内では、ナマコ漁や牡蠣の養殖が盛ん。温暖な気候にも恵まれ、周囲の地域は伊木力みかんなど、おいしい農作物の産地にもなっています。




 大村湾は、長崎県本土のほぼ中央に位置し、5市4町(長崎市、佐世保市、大村市、諫早市、西海市、川棚町、東彼杵町、長与町、時津町)に面しています。地図で見ると、袋状をした湾の北部に佐世保港に通じる細い湾口があり、外洋へは直接通じていない閉鎖的な地形であることが、よくわかります。


 長崎県環境政策課の方によると、大村湾のように閉鎖性が強い海域は、海水の交換が十分でないため、水質がいったん悪化すると改善するのが容易ではないとのこと。そのため大村湾流域では、生活排水対策重点地域として、環境保全に特に力を入れているそうです。

 

 さて、今回のクルージングは、湾奥の時津港を出で、いっきに北上し湾口の針尾瀬戸を抜けて外洋へ出るというルート。ちなみに、時津港は400年以上も昔、西坂の丘で殉教した26聖人が、京都や大坂で捕らえられ、長崎へ護送される際、大村湾を渡って上陸した港として知られています。




 今回の大村湾でいちばん楽しみにしていたのは、スナメリとの出会いです。スナメリはクジラやイルカの仲間で、体長は約1.5メートル。絶滅の恐れがある生物として近年注目され、地元のニュースでもたびたび話題に上がっています。以前、水族館で見たことがあるのですが、ずんどう気味の体形と丸い顔がかわいらしく、子どもたちの人気者でした。


 高速船のスタッフに話を聞いてみると、大村湾にはイルカもいて、航行中に数頭のスナメリやイルカの群れを見かけることがあるそうです。スナメリにはイルカのような背ビレがないので、すぐに見分けがつくとか。この日は、残念ながらスナメリの姿は確認できませんでした。



 

 もうひとつの楽しみが針尾瀬戸に架かる「新西海橋(しんさいかいばし)」です。佐世保市と西海市をつなぐこの橋は、先月5日に開通したばかり。日本初の有料橋として1955年に開通した「西海橋」の約300メートル隣に並んで架かっています。約半世紀前、東洋一とまでいわれ注目を浴びた「西海橋」。当時の開通の賑わいを知る方々の中には、新たな橋の登場に特別な思いを寄せる方もいらっしゃるのではないでしょうか。




 爽やかな空色をした「新西海橋」は、周囲の町の観光面での活性化に大きな期待が寄せられているとか。この日、名物のうず潮は、ゆるやかな流れ。新旧の橋の下を、減速した船でゆっくりくぐりながら、時の流れに思いを馳せたのでありました。




◎参考にした本や資料/「大村湾環境学習プログラム」(長崎県環境政策課)

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