第255号【トマトってこんなにおいしい!高島フルーティトマト】
長崎港沖に浮かぶ高島(長崎市高島町)は、かつて炭鉱の町として栄えたところ。周囲6、4kmほどのこの小さな島は、現在、釣り公園や海水浴場、キャンプ場、温浴施設など美しい海を活かした施設が設けられ、リゾートの島に生まれ変わっています。
そんな高島の特産品として、注目を浴びているのが、「高島フルーティトマト」です。糖度が高く、香りもいい。まるでフルーツのような味わいなのです。お尻がツンととがった形が愛らしく、手にとるとズッシリとした重量感があります。「果肉がきっしり詰まっているんです。だから、水の中に入れると底へ沈みますよ」と、高島トマト事業部の元田矯(もとだ つよし)さん。高島でこの事業がはじまった17年前から、この土地に合うおいしいトマト栽培の研究を続けている方です。
「高島トマトは、永田農法で知られる永田照喜治(ながた てるきち)さんの指導の下ではじめられました。永田農法はスパルタ農法ともいわれ、植物が本来持つ力を最大限に引き出すために、最小限の水と肥料で育てます。この方法だと、栄養価の高い本当においしいトマトができるのです」。そこに元田さんの研究に基づく工夫や改良が加わり、よりおいしいトマトができるようになりました。
「トマト本来の味を引き出すために、ハウス内は、昼と夜の寒暖の差が激しいトマトの原産地、ペルーのアンデス高原の環境に近付けています」という元田さん。おいしいトマトを栽培するためには、この他、水やりや施肥など、細やかな配慮が必要です。
冬でも温暖で、日照の多い高島。トマトの収穫時期は、毎年1月から5月です。糖度は、冬場に収穫する初もので、9度を示すものもあります。通常のトマトの糖度が、4~5度ですから、だんぜん甘いことがわかります。そして、温かくなるにつれ、糖度はさらに増してメロン並みになるそうです。
高島のトマト栽培は、1989年度、第三セクターの事業として取り組まれたのが最初です。そして、昨年の高島町と長崎市との合併後には、市がこの事業を引き継ぎ、まもなく民間会社、「崎永海運株式会社」の「高島トマト事業部」が、市から農地と施設を借り受けて事業を引き継ぎ、現在に至っています。
さまざまな状況を乗越えて存続してきた高島トマト。やはり、それだけの価値と魅力があったということなのでしょう。これまでは、県外の企業経由の流通だったため、地元長崎の店頭で見かけることは少なかったのですが、今シーズンからは、地元の百貨店やスーパーにもお目見え。地産地消で、地域の活性化もめざしているそうです。
収穫のこの時期、高島の直売所では、毎週火、木、土曜日の朝に販売していますが、すぐに売り切れてしまうとか。今年は寒さが厳しかったため例年より一ヶ月半ほど収穫が遅れているそうですが、すでに事務所には、全国各地から寄せられた注文伝票が山積みで、収穫を待っている状態です。
全31棟のビニールハウス(約3、100坪)で、元田さんそして8名の従業員の皆さんが手間ひまをかけて育てた「高島フルーティトマト」。選果作業場で収穫したばかりの完熟のトマトを、ひとつひとつ丁寧に扱っている姿が印象的でした。
◎取材協力/たかしま農園