第247号【長崎歴史文化博物館オープン!】

 長崎の諏訪神社にほど近い、緑あふれる閑静な一角に今月3日、「長崎歴史文化博物館」が開館しました。海外との交流で華やかに彩られた近世長崎の歴史・文化を中心とした資料約48、000点が一堂に集結。長崎の新しい観光スポットとして、また長崎学の研究や情報を発信する拠点として、大きな注目を浴びています。




 石垣と美しい白壁に囲まれた風格ある和の外観と、屋根瓦の端正な表情が印象的なこの博物館の設計は、世界的に活躍する建築家、黒川紀章氏によるものです。鉄筋コンクリート3階建て、敷地面積約1万4000平方メートル。うち2階の一部は、瓦ぶきの旧長崎奉行所立山役所が当時の場所に復元されています。かつて長崎の行政、司法、外交など幅広い役割を果たしたこの奉行所は、江戸時代の絵図面や発掘された遺構などをもとに、できるだけ忠実に再現されていて、屋根瓦をはじめ障子や木戸、ふすまなど本格的な木造建築の美を堪能できます。




 屋内には、奉行の応接間であった「書院」、オランダ商館長との接見や貿易品のあらためが行われたという「対面所」、そして当時、裁判が行われた「お白州(しらす)」なども復元されています。白木の匂いが漂う廊下を歩くと、ふすまの影から、今にも奉行所の役人が現れそうでドキドキします。まさに、江戸時代にタイムスリップしたような臨場感にあふれています。




 2階の常設展示場は、「近世長崎の海外交流史」をテーマに、「大航海時代」や「朝鮮」、「中国」、「オランダ」との交流の歴史などが、豊富な資料で紹介されています。この博物館では、美術資料や古文書などの展示だけでなく、体験装置やデジタル映像、情報検索機器などを通して、楽しく、わかりやすく歴史と触れあえるのが魅力です。


 たとえば、国認定重要美術品の屏風絵、「南蛮人来朝之図(なんばんじんらんちょうのず)」は、ガラス越しに展示されている実物の前に置かれたモニター画面で、肉眼では見えにくいところを拡大したり、描かれている内容について知ることができます。17世紀初期のものであるこの美術品が、モニターを通してぐっと身近に感じられ、新たな歴史への興味につながっていく感じがしました。




 また、この展示室には江戸時代、長崎の町人が暮らした町家(まちや)の一部が再現されていて、当時の暮らしを垣間見ることができます。現在は、くんちの頃の暮らしを再現していますが、年に数回季節に応じた展示がされる予定だそうです。


 3階では、開館記念特別展として「長崎大万華鏡~近世日蘭交流の華 長崎」を開催中です(~来年1/9迄)。長崎ガラスや青貝細工など長崎独自の美術工芸品や江戸時代にオランダ人によって収集され、海外に伝えられた日本を、長崎歴史文化博物館とオランダのライデン国立民族学博物館の所蔵資料約400点により紹介しています。門外不出といわれた「唐館図屏風」「蘭館図屏風」(いずれも個人蔵)が初めて公開されており、話題を呼んでいます。




 また、開館記念特別展の第2弾として、「西太后とラストエンペラー展」が来年1月21日から開催予定です。北京故宮博物院所蔵の資料が海を渡り長崎へ。世界初公開となる文物もお目見えするそうなので、今から楽しみです。


 さて、復元された奉行所の「お白州」では土・日・祝日に、当時行われていた裁判の様子が寸劇で再現されており、たいへん好評です。ちなみに、演じる役者さんはボランティアです。この博物館では、展示物の案内役をはじめ別棟に設けられた長崎の伝統工芸の体験工房などで、大勢のボランティアが活躍されています。「長崎歴史文化博物館」は、長崎を愛するそういった方々の思いに支えられて新しい一歩を踏み出しました。



◎取材協力:長崎歴史文化博物館 ホームページアドレスhttp://www.nmhc.jp/

     長崎市立山1丁目1番1号


◎ 参考にした資料や本/Nagasaki Museum of History and Culture  長崎歴史文化博物館(同館発行)、広報ながさき2005年11月号、

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