第246号【懐かしのイモ団子を作る】

 先日、五島在住のご夫婦から「サツマイモ」が届きました。折々にとれたての魚や野菜を送ってくださるご主人は、定年退職後、小船でささやかに漁を営み、奥様は自宅そばの畑で野菜作りにいそしみながらスローライフを満喫されています。この時期は、かんころ餅の材料となるサツマイモの収穫でけっこう忙しいそうです。




 かんころ餅は、「かんころ」(サツマイモを薄切りにして茹で、3~4日干して乾燥させたもの)に、もち米を加えて作ります。素朴なおいしさが人気のこの餅は、五島の特産品として知られていますが、島原半島や長崎市外海地区など、県内各地の家庭で今も作られているようです。




 以前、サツマイモ畑のかたわらで大きな釜を焚き、「かんころ」を茹でる様子を見たことがありますが、湯気に混じるサツマイモの匂いに、思わず笑みがこぼれ、和やかな気分になりました。サツマイモは、かつて食糧が不足した時代、人々の食生活を大いに支えてくれました。そういう遠い記憶が、サツマイモに対する信頼感となって私たちのDNAに刻まれているのかもしれません。


 今回は、かんころ餅と同じくサツマイモを使った昔懐かしいお団子をご紹介します。サツマイモを使った餅や郷土のお菓子は全国各地にあると思いますが、長崎のものは、「イモ粉」(サツマイモを乾燥させて粉にしたもの)で作り、濃いこげ茶色をしているのが大きな特長です。黒光りするその姿を初めて見た人は、驚きを隠せません。




 地元では「イモ団子」、「かんころ団子」と呼ばれているこのお団子について、50~70代の方々は、「昔、おばあちゃんがよく作ってくれた」とおっしゃる方が多く、今ではほとんど作らなくなったそうです。やはり戦中、戦後の食料不足の時代に食べていたらしく、つらい時代を思い出すからキライという方も中にはいらっしゃいましたが、おおむね誰にとっても古き良き食べもののようです。


 イモ団子は、材料も、作り方もとてもシンプルです。〈1〉サツマイモ(小1個)は皮をむき、五ミリくらいの輪切りか、さいの目に切り水につけてアクを抜きます。〈2〉イモ粉(100g)に砂糖(大さじ1~2)と塩少々を入れ、水(125ccくらい)を加えて練ります。〈3〉ココア色になった生地を10等分し、水気を切った〈1〉のサツマイモの輪切りを包んで丸い形に。さいの目のものは丸い生地に埋め込みます。〈4〉蒸し器で強火で10~15分ほど蒸せばでき上がりです。




 母に聞いたレシピで、今回初めて作ってみましたが、失敗なくできました。サツマイモには、ビタミンCやEが多く含まれ、美肌に有効で、風邪、便秘、大腸ガンの予防にもつながるといわれています。「イモ団子」は、素朴なおいしさを楽しめて、健康にもうれしいも一品のようです。




 かつて、限られた食糧の中で、少しでもおいしくお腹を膨らまそうと工夫し、食べ継がれてきた郷土の味。人の知恵と素材のおいしさが詰まったこのようなスローフードを見直したいものですね。



◎参考にした資料や本/からだによく効く食べもの事典(池田書店)

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