第243号【もうすぐ、長崎くんち!】

  国の重要無形民俗文化財、「長崎くんち」がいよいよ来週、10月7、8、9日の3日間行われます。寛永11年(1634)年にはじまったとされるこの祭りは、日本の伝統的なスタイルに、中国風、南蛮風が豪華絢爛に入り交じり、まさに長崎ならではの異国情緒あふれる秋の大祭です。


 諏訪神社に踊りを奉納する「踊り町」は、現在、約40町ほどあり、その内5~7町が7年に1回のサイクルで伝統の出し物を披露します。今年の「踊り町」は、今博多町(いまはかたまち)、玉園町(たまぞのまち)、魚の町(うおのまち)、江戸町(えどまち)、籠町(かごまち)の5つの町。本番を目前に控え、各町とも出し物の練習は仕上げの段階にです。今回はその見所などをご紹介します。




 今博多町が奉納するのは、「本踊り」です。「本踊り」とは、「長崎くんち本来の踊り」という意味。諏訪神社で最初に奉納踊りを舞ったのは、今博多町出身の女性と伝えられ、この町は奉納踊りのルーツといわれています。今回は、花柳流のお師匠さんの指導を受けた女性たちによる「鶴の舞」が披露されます。この演目はとても評判が良く、優美な舞が期待されます。鶴の声を笛の音で表現したという鳴り物も楽しみです。

 

 玉園町は、「獅子踊り」を奉納します。昔から「筑後獅子」と言われるこの踊りは、5頭の獅子と子供たちが演じる唐子(からこ)たちとの絡みが見所です。獅子に乗ったり、はやしたりなど微笑ましい光景が見られそうです。また、2人の獅子使いが上半身と下半身に分かれて担当する獅子の動きにも注目。蚊を追ったり、耳を掻いたりするユニークなしぐさやダイナミックに回転する動きなど、気合いと迫力のある踊りは見逃せません。


 魚の町は、「川船」を奉納。1600年頃、中島川の一角に形成されたというこの町には魚市場があったことから「魚町」という町名になったとか。その名にちなんだ「川船」は、屈強な男たちによる勇壮な曳きまわしが魅力です。男の子が演じる船頭さんによる網打ちは、上手く魚を捕らえられるかも気になるところです。さらに、見逃せないのはこの町の傘ぼこの飾(だし)です。1830年頃に作られたというビードロ細工が配されいます。市の文化財にも指定されている貴重なもの。必見です。




 籠町は、1790年頃から奉納しているという「龍踊り」です。この町の近くに唐人屋敷があり、唐人たちから習ったのがきっかけだとか。唐楽器を使って男の子たちが蛇囃子(じゃばやし)を打つ中、大人の男たちが龍をダイナミックに操ります。どこかジャズのようでもある軽快な長ラッパの響きが、龍踊りを盛り上げます。「吹くのは、とてもむずかしい。奏者は口の中が切れて血まみれになるんですよ。」と籠町の龍踊りを長年見続けてきた方がおっしゃっていました。「そろそろ仕上げの段階ですね」と話しかけると、「いや、くんちが終わった頃、ようやく仕上がるものですよ」という答え。伝統の演技に対する町の人の厳しい目が籠町の龍踊りに磨きをかけているようです。




 出島の門前町、江戸町は、「オランダ船」を奉納します。目にも鮮やかなマリンブルーの船体の上でひるがえるのは、日本国旗、オランダ国旗、そしてかつてオランダ商館長が江戸町に贈った紋章「たこのまくら」の旗(※コラム239号参照)です。男たちによる豪快で勇壮なオランダ船の曳きまわしと、かわいい子供たちのオランダ小船が見物です。


 長崎くんちをもっと知りたい、楽しみたいという方は、「長崎市歴史民俗資料館」(長崎市上銭座町)で開催中の「長崎くんち資料展」(~10/30日迄)も見逃せません。昭和初期の頃のくんちの写真やくんち菓子などが展示されています。







◎ 参考にした本や資料:ながさきの空278号(長崎歴史文化協会研究室)、長崎くんち(ナガサキインカラー)

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