第241号【おいしい夏の魚、ハモ】
きびしい残暑が続いていますが、お元気ですか?風鈴がわずかな風をつかまえてチリンとなる音や打ち水に濡れる庭先の緑。昔ながらの涼の風情は、乾いた心までも潤してくれます。むやみに自然に逆らわず、知恵と工夫で暑さをしのぎ、その季節ならではの暮らしを楽しんだのは、さほど遠い時代ではありません。見直したいものですね。
今回は、夏ならではのおいしい魚を求めて、朝市に行ってきました。古くから水産業が盛んな長崎には小さな漁港がたくさんあり、とれたての魚をその日のうちに販売する直売所や市場も市内各所に点在しています。訪れたのは、長崎駅から車で約20分。美しい橘湾を望む長崎市戸石町の『戸石フレッシュ朝市』です。
戸石漁港の一角に設けられたこの直売所は、開店後すぐに完売することもあるほどの人気ぶり。毎朝7時開店(火曜は定休日)。ハモ、マダイ、アジなどとれたての魚をはじめ、かまぼこや開きなどの加工品、さらにはナシ、ナス、キュウリ、生花など地元の旬の農産物も売られています。とにかく新鮮で安いので、地域住民だけでなく遠方からの利用客も多いとか。早朝に訪れた常連客らが、お目当ての品を次々にカゴの中へ入れていき、レジの前には、すぐに長い行列ができました。
戸石地区の漁業は小型底引網が主流でエビ、コウイカ、ハモなど海底にいる種類が多く水揚げされています。夏場は特にハモが有名で、8月初旬には毎年「ハモ祭り」が行われます。夏のハモ料理といえば、関西方面が有名ですが、長崎でもこの時期、よく食卓に上がります。
ウナギやタチウオにも似た細長い姿のハモは、深く裂けた口と鋭い歯を持ち、見た目はちょっとこわい感じです。実際、釣り上げると、手当たりしだいに噛みつく荒々しい性格だそうです。しかし味わいの方は、淡白で上品。夏場は特に脂がのっておいしいのです。
小骨が多いハモは、魚屋などで購入の際、「骨切り」をしてもらいます。皮一枚を残しながら身に細かく包丁をいれるこの調理法は、慣れない人にはとても難しいのです。市場や魚屋の店頭では一口大に湯引きした状態で売っていることも多く、家庭では、それを酢みそでいただいたり、お吸い物や蒸し物の具などにします。
捨てるところが無いといわれるハモは、老化防止や疲労回復に役立つ栄養素が含まれています。食欲が落ちがちなこの時期、うれしい食材です。酢のものや蒲焼きなどにしてもおいしいですよね。
県外へ出荷されるブランド魚もある一方で、ハモのように今朝、地元でとれたばかりの魚を、その日にいただける環境がある。長崎って、本当にいい町です。