第240号【60年目の夏、平和の碑を巡る】
暑中お見舞い申し上げます。暑さのあまり、ついつい冷たいものを食べ過ぎてはいませんか?こんな時こそ、熱々のちゃんぽんがおすすめです。汗をたっぷりかきながらいただくと、食べ終わる頃には爽快な気分。栄養もバッチリですし、いつもの具にコーンやゴーヤ、オクラなどお好みの夏野菜を加えれば、我が家特製・夏ちゃんぽんの出来上がり。今夜の食卓にいかがですか。
ひとつのテーブルに家族や友人たちのおいしい笑顔が集う。もう、それだけでハッピーな気分になりますよね。そうした日常の中で小さな幸せを感じる瞬間、家族や友人そして平和な社会のありがたさを感じます。
小学生の頃、毎年長崎原爆の日(8月9日)は全校登校日になっていて、犠牲者へ祈りを捧げ、原爆の恐ろしさと平和の尊さについて学びました。ある年、先生が、『世界の平和の第一歩は、家族や友人を大切にし、仲良くすることです』とおっしゃいました。子供心に、「何だ、簡単なことだなあ」と思った記憶があります。しかし、昨今のニュースは、その時の思いとはまったく逆の現実を毎日伝えています。
今年、被爆60周年を迎えた長崎。戦後、長崎市内には、爆心地となった浦上地区を中心に、多くの原爆慰霊碑が建立されました。今回は、その中から、いくつかの碑をご紹介します。ひとつめは、浜口町の電停近くの線路そばにひっそりと立つ慰霊碑です。高さ約二メートルほどある自然石に「原子爆弾受難死者之霊」と刻まれています。
爆心地にほど近かったこの辺りの惨状は凄まじく、あらゆるものが破壊され、多くの身元不明の遺体が瓦礫に埋もれていたそうです。この碑は、その無縁仏の供養のために原爆から一年後、地元自治会(当時浜口町)の有志らによって建立されたものです。現在も自治会の方々が定期的に清掃をし、祈りを捧げています。当時、この近くで被爆した電車は爆風で破壊され、乗客も熱線で焼かれ亡くなっています。現在、この碑の前を何ごともなかったように路面電車がスイスイと行き交っています。大きな犠牲の上に生まれた平和な光景です。
この碑の近くには、爆心地公園や長崎原爆資料館が控えています。その周囲には、数メートルごとにさまざまな職場や団体などによって建立された原爆慰霊碑が点在しています。多くの乗客とともに亡くなった電鉄の仲間を追悼する碑、長崎で亡くなったすべての外国人戦争犠牲者を追悼する碑、反原爆詩人・福田須磨子の詩碑など、ひとつひとつの碑に刻まれた文面を丁寧に読みながら巡りました。
途中、子供の慰霊碑ともいくつか出会い、胸が詰まりました。また、長崎を最後の被爆地とする誓いの火を灯す灯火台もあり、毎月9日に火が灯されていることを今回はじめて知りました。灯される火は、平和の象徴とされるオリンピック発祥の地、オリンピアの丘で採火された「聖火」だそうです。
多くの人々の命を一瞬にして奪った原爆。どの碑からもあの惨劇が二度と繰り返されてはならないという強い思いが伝わってきます。その記憶を忘れないために、暑いこの季節だからこそ、原爆の碑を巡り平和への思いをあらたにしたいですね。