第231号【浦上そぼろを作る】

 行楽の季節です。おいしいお弁当を作って野や山へ出かけませんか。今回は、夕食のおかずにはもちろん、お弁当にもおすすめの長崎の郷土料理、「浦上そぼろ」をご紹介します。この料理は、カトリック信者が多いといわれる長崎の浦上地区に伝えられるもので、その昔、神父様から豚肉を食べることを習った信者さんたちの間で作られるようになった料理だといわれています。


 たっぷりの野菜類に、ゴマの風味と豚肉から出るだしがしっかりしみておいしい「浦上そぼろ」。各家庭によって材料や調味料に微妙な違いがあります。今回作ってみたのは、知人から教えてもらった簡単レシピ。今どきの長崎人が、「子供の頃よく食べたわ」と喜んでくれる甘めの味わいです。


材料は4、5人分です。

豚肉(200g)、タケノコ(ゆでたもの300g)、ゴボウ(300g)、モヤシ(300g)、コンニャク(300g)、ニンジン(200g)、干シイタケ(8~10枚)、インゲンマメ(適宜)、すりゴマ(大さじ3杯弱)、ゴマ油(適量)、砂糖(大さじ5~7杯)、酒・みりん・醤油(各大さじ4~5杯)

各調味料の量は好みに応じて適宜加減してください。






[作り方]

(1)豚肉、ニンジン、もどした干シイタケは、がんばって千切りにします。

(2)コンニャク、タケノコも細く薄切り。ゴボウも薄くそぎ切りにします。

(3)フライパンでゴマ油を熱し、豚肉とゴボウ、ニンジンを強火で炒めます。

(4)豚肉に火が通ったところで、タケノコ、干シイタケ、コンニャクを加え中火で炒めます。

(5)全体に火が通ったら砂糖、酒、みりん、醤油で味をつけ、モヤシを入れます。

(6)水分がなくなるまで炒ったら、火を止め、すりゴマを混ぜ入れて出来上がり。盛り付けの時、彩りにインゲンマメなどを散らします。






 伝え聞くところによると、当初、信者たちは豚肉を多く使うのを遠慮したため、野菜たっぷりの料理になったのだとか。砂糖が多く入り甘いのは、その昔、砂糖が手に入りやすかったという歴史を持つ長崎ならではの特長のなのでしょう。


 また、ちゃんぽんや皿うどんなど、中国にゆかりのある長崎の郷土料理に欠かせないモヤシがたっぷり入っているということ、材料の肉や野菜類をいっきに千切りや細切りにするところがチンジャオロースのような中華料理を彷佛させるなど、中国の影響もしっかり感じられるところも長崎らしい。


 ちなみに「そぼろ」とは、今どきの料理書ではあまり見かけない「そぼろ切り」という切り方からくる名だそうで、乱切りをもっと細かくしたような切り方だとか。浦上地区以外でも、単に「そぼろ」と呼んで、ギンナン、春雨、キクラゲなどの食材を使うご家庭もあるようです。


 「浦上そぼろ」は、シャキシャキとした食感を楽しめる太めのモヤシを使うのがおいしさの秘けつだとか。冷えても、おいしいのでお弁当のおかずにもぴったりです。たくさん作って残ったら、マヨネーズであえると、ひと味違った別のおかずに変身します。ぜひ、お試し下さい。




◎ 参考にした資料や本/聞き書き長崎の食事(社・農山漁村文化協会)、「たべもの語源辞典」(清水佳一編・東京堂出版)、

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