第223号【長崎節分料理・紅大根と金頭】
先週の節分の日、みなさんの地域ではどんな節分料理を召し上がられましたか?節分料理はその土地の風土に彩られ、それぞれ個性があるようですが、使う素材に邪気を払うなどの縁起をかつぐという点では同じようです。今回は長崎の節分料理を代表する二品をご紹介します。
一品目は「紅大根」です。その名の通り紅い色をした大根で、20センチ前後の小振りな品種です。紅いといっても皮の部分だけ。切ると中は真っ白で、その紅白の色合いがおめでたい感じがします。長崎では毎年節分が近くなると出回りはじめ、「節分大根」などと表示され売られています。
昔の人は、その赤く細長い姿が赤鬼の手や腕に見えたのでしょう、古く「鬼の手大根」とも呼ばれていたようです。著名な長崎郷土史の先生によると、節分の日には、輪切りにして塩をかけた「紅大根」を、神棚の下の段とか、横の方にひとまず置いた後に、いただいたそうです。「それには、鬼の手を取ってきた、という意味があります。けして、神棚にお供えしたわけではありませんよ。何せ鬼の手ですからね」と教えてくださいました。その方によると、「紅大根」を節分料理に用いるのは、キリシタンの町だった長崎にはじまった料理とは考えられず、京都の方からきたものであろうということでした。
「紅大根」は通常の大根より固く、噛むとカリカリとした歯ごたえがあり、味は大根より蕪(カブ)に近い感じです。現在は、塩もみで食べるより、なますにしていただくことが多いようです。栄養分は、ビタミン類や消化を助ける酵素を含み、葉にも鉄分、カルシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。確かに身体の中のいろいろな鬼を退治してくれそうな野菜です。
二品目は「金頭(カナガシラ)」。ホウボウによく似た魚で長崎では「ガッツ」とも呼ばれ親しまれています。金頭はその名前から、「お金がたまる」といわれ、節分の縁起物として長崎では煮つけにしていただきます。地元の魚屋さんに聞いてみると、「一年に一度だけ注目を浴びる魚」だそうで、節分の日でもない限り店頭に並ぶ機会はとても少なく、相場もこの日ばかりは3倍ぐらいに跳ね上がるそうです。小骨が多いですが、とても上品な味わいです。
赤ちゃんが、一生食べ物に困らないようにという願いを込めて行われる「お食い初め」という儀式がありますが、そのメニューに金頭が添えられるといいます。頭がかたい金頭は、歯を丈夫にし、長寿につながるという意味があるのだそうです。
「紅大根」、「金頭」とともに、もう一品、「イカ」の煮つけも節分料理として出されます。「イカの胴がキンチャクのような形をしているので、そこにお金などを入れるという意味があるのでしょう」と魚屋さんは言っていました。