第221号【カステラよもやま話】
アメ色に焼き上がった表面から、ほのかに香る甘い香り。きめ細かにしっとりとふくらんだ黄色いカステラの姿には、長い伝統に培われた風格と同時に、気品さえ漂っています。
カステラがおやつの王様的存在だったのは、いつの頃だったでしょう。子供の頃、カステラを切りわける大人の手許を見つめ、厚みが均等であるかを密かにチェックしていたことや、いつもカステラをお土産に持ってきてくれた人の顔が思い浮かびます。みなさんにも、何かカステラにまつわる思い出があるのではないでしょうか。
しかし、カステラは懐かしいだけの食べ物ではありません。飽食の時代をくぐり抜けて尚、そのおいしさと人気は健在です。これほど長く愛されている理由は、日々、おいしいカステラをめざして精進している職人さんの存在が大きいと思います。
長崎を代表する南蛮菓子カステラ。そのルーツは、スペインのお菓子ビスコチョ(Biscocho:小麦粉、鶏卵、砂糖を材料とした焼き菓子)とも、ポルトガルのスポンジケーキの一種であるパオ・デ・ロー(Pao・de・Lo)ともいわれ、長崎には16世紀半ば頃にポルトガル船によって伝えられたという説が有力のようです。
長崎県外の人にとっては長崎観光の土産品として人気が高いカステラですが、長崎では、四季折々の行事や祝い事などで、いただいたり、贈ったりするなど、人々の暮らしのどこかにいつもカステラがあります。いただいたカステラの箱を開けると最初のうちは、独特の風味としっとりした味わいを楽しめますが、日が経つと水分が抜けてパサついてきます。そんな時、各家庭ではちょっと一工夫を加えておいしく食べているようです。
もっとも簡単なアレンジが、牛乳にひたすというもの。カステラのザラメの甘さと牛乳の風味がよく合います。豆乳でもグッドです。また、バターやジャムをたっぷり付けて食べるという人もいます。ちょっとカロリーが気になるところですが、なかなかおいしいです。
とっても寒いこの季節におすすめなのが「カステラくず湯」です。砂糖で好みの甘さに仕立てたくず湯をカステラにかけ、刻んだショウガやゆずなどを添えていただきます。トロリとしたくず湯の口あたりとカステラのやさしい味わいに、身も心もホットくつろぎます。
大人向けのおやつとしておすすめなのが、ブランデーを染ませたカステラです。まず、オーブントースターでカステラを軽く焼いて表面をカリカリとさせ、ブランデー(オレンジキュラソーなどでも良い)をちょとかけます。これだけで、カステラがおいしいブランデーケーキに早変わりです。
食品成分表におけるカステラは、和菓子(なま・半生菓子類)に分類されるそうです。西洋をルーツにしながら、長崎の風土と人に育まれ、おいしい変化をとげてきたカステラ。将来は宇宙食としての可能性を示唆する研究者もいるようです。カステラの未来にはワクワクするような展開が待っているかもしれませんね。
■参考にした本: カステラの科学(仮屋園璋著)、ながさきことはじめ(長崎文献社編)