第219号【長崎市博物館~大唐人屋敷展~】

 温かくして過ごしていらっしゃいますか?お正月気分もすっかり抜けた今、長崎っ子たちが待ち遠しく感じているのが、「長崎ランタンフェスティバル」です。長崎市内中心部に1万2千個にも及ぶランタン(中国提灯)が飾られて、街中が赤や黄の華やかな色に染まるこの祭りは、今年は2月9日(水)~2月23日(水)の15日間にわたって開催され、県内外から大勢の来場者が見込まれています。


 中国ゆかりのこのフェスティバルを見に行く予定の皆さんに、ぜひ、足を運んでいただきたいのが、現在、長崎市立博物館で開催中の「唐人屋敷展」(2月20日迄開催中)です。古くから長崎の文化に大きな影響を及ぼしてきた中国。展示されている歴史・美術工芸資料から、その関係の深さを垣間見ることができます。




 その中の「唐蘭絵館巻」(川原慶賀筆)には、当時の唐人屋敷での暮らしぶりや貿易の様子が細かく描かれています。唐人屋敷とは、鎖国時代、長崎に来航した中国人たちが暮らしたところで、現在の新地中華街にほど近い、館内(かんない)町にあります。そこには今も、当時の面影を残すお堂などがあり、「長崎ランタンフェスティバル」の際には、「唐人屋敷会場」として、もっとも中国の風情に包まれた会場として人気です。


 唐の商人や、使用人らしき人、そして日本人で唯一、唐人屋敷の中に入ることができた遊女など、慶賀が描いたその絵巻の中の人物たちは、ひとりひとりイキイキとして、どこかおかしみさえ感じさせ、話声まで聞こえてきそうなのです。この絵巻を見ると、絵師というより、凄腕イラストレーターと呼びたくなる川原慶賀。その観察力と描写力に感心しながら、慶賀自身の人を見る目の優しさが伝わってきます。ぜひ、実際の絵巻をご覧になってください。


 幕末の長崎の代表的な絵師として知られる石崎融思による唐船の絵も展示されていました。当時、長崎では、たくさんの貿易品を運んでくる唐船は、宝船の意味もあり、その絵をお正月などに飾っていたそうです。




 長崎半島から長崎港内までを描いた「長崎港内外図」には、長崎港に入港するオランダ船と唐船の海上ルートが記されていました。いずれの船も遠見番が置かれていた長崎半島先端の野母を目安にして航行してきており、長崎港入り口に浮かぶ伊王島のところでは、それぞれ違う方向(伊王島の北側から入るルートと伊王島と香焼の間をいくルート)から長崎港に入っていたことなどがわかります。




 ところで、この「唐人屋敷展」は、1654年に中国から日本にやってきた隠元禅師ゆかりの展示物も数点展示されていました(実は「唐人屋敷展」のサブタイトルは「隠元禅師渡来350年記念」です)。彼を描いた頂相(ちんそう:お坊さんの肖像画のこと)は、隠元禅師が日本にはじめて伝えた黄ばく宗の肖像画らしく、写実的な描写でその姿が描かれていました。また黄ばく宗の書の中でも尊ばれているという、隠元禅師、木庵、即非の書も見ることができます。「黄ばく様」といわれる、おおらかな書体が特徴だそうで、確かにのびのびとして気持ちのいい書でした。






 さて、長崎市立博物館は、今年3月末で休館します。その前に、ぜひ、訪れてみませんか?


◎取材協力:長崎市立博物館(長崎市平野町 平和会館内)

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