第210号【長崎の秋の魚いろいろ】
豊かな海に囲まれた長崎県の海岸線は、好漁場の条件とされるリアス海岸。その長さは約4,200キロメートルあり、日本で2番目の長さを誇ります。さらに600近くの島々も擁し、県全域にわたって海釣りの好ポイントが数多くあります。釣り好きの人たちにとっては、まさにたまらない環境です。釣りの経験があまりない人でも、漁場に恵まれているからか、意外な大物が簡単に釣れてしまうこともよくあります。先日、長崎市近郊の釣り場へ初めて小アジ釣りに行ったら、思いがけずクロダイ(チヌ:30センチ)が釣れました!この魚を釣るのは、けっこうむずかしいそうなのですが…。
うれしいことは続くもので、季節ごとに我が家に新鮮な魚介類を届けてくれる五島列島の漁師さんからイセエビが送られてきました。「小ぶりだけど、たくさんとれたので」とのこと。体長15~25センチほどで、イキがよく見るからにおいしそうです。
聞くところによると、日本の大平洋岸に生息するイセエビがどこから来たのかということについて調べ、五島列島がそのルーツではないかと考えている学者さんがいるそうです。五島列島ではイセエビの漁獲量は安定しており、ルーツだと言われれば、確かにそうかもしれないと思える話しです。
イセエビは調理する前は茶色っぽいですが、ご存知のように煮ると鮮やかな赤色になります。その赤がとてもきれいなので昔から祝い事には欠かせない食材です。高価なので普段はなかなか買う機会はありませんが、この時ばかりは贅沢に、刺身とお味噌汁にしました。透明感のあるうす紅色をしたイセエビの肉は、甘い潮の香がします。味噌汁の椀では窮屈とばかりにヒゲがピーンとはみ出しています。脳味噌からでたコクのあるダシは文句なくおいしい。漁師さんへの感謝の気持ちでいっぱいになりました。
その漁師さんからは、秋から冬にかけて水イカ(アオリイカ)も届きます。真っ白な身は厚く弾力があり、噛むとモチモチッとして甘いのです。口の肥えた東京の友人が、これを食べたら他のイカは食べられないと絶賛してくれました。
水イカは一年を通してとれるそうですが、漁期といわれるのは春と秋。大量にとれる年と、そうでない年の差が激しく、ここ数年はめっきりとれなくなったと漁師さんはぼやきます。水イカはそのまま刺身もいいですが、一夜干しもまた格別です。上品な旨味があり、一般に食べられるスルメと比べると臭みがなく、見た目も味わいもふくよかな感じです。「一夜干しする時は、気温が低く強風の日がいい。真っ白なままきれいに乾いて、おいしいんです。でも、ここ数年は暖冬の影響で生ぬるい風の日が増え、1週間ほど干さなければならない時もある。すると色に赤みがかかり、味も少し変わってしまうんですよ」と漁師の奥さんが話していました。
イカは、高タンパク質、低カロリーのヘルシーな食材で、血中のコレステロール値を下げる効果や、肝臓の解毒作用、胆石予防、神経系機能の改善などの効果があるとか。新鮮でおいしい長崎県のイカを、ご家族の健康づくりに役立ててください。
◎ 参考にした冊子:「長崎県魚の栄養あるある辞典」(長崎県魚市場協会連合会)