第206号【ことしの長崎くんちの見どころ】

 今年はどんな奉納踊りが見れるのか、ふるまい酒に酔いしれながら本番への期待感に包まれた「庭見せ」。くんち行事のひとつである「庭見せ」は、今年の奉納踊りを担当する「踊り町」の家々が室内や庭を解放し、くんちで使用するだしものや傘ぼこ、衣装、道具などを公開することで、祭りの準備がしっかり整ったことを町内外の人々に知らせるものです。毎年10月3日の夕方から夜にかけて行われ、くんちの踊り町が点在する長崎市中心部は大勢の人出で賑わいます。






 そして、いよいよ明日から3日間、長崎・諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」(国指定重要無形民俗文化財)が本番を迎えます。寛永11年(1634)にはじまり、370年目を迎えた今年の踊り町とだしものは、本古川町「御座船」、東古川町「川船」、出島町「阿蘭陀船」、小川町「唐子獅子踊り」、大黒町「本踊り・唐人船」、紺屋町「本踊り」、樺島町「太鼓山(コッコデショ)」です。9月になっても猛暑が続いた今年、この7つ踊り町の本番に向けてのけいこは、とてもきつかったことでしょう。




 それでは、各踊り町の見どころをご紹介します。本古川町の「御座船」は、約3トンはあるというヒノキ造りの美しい和船。「二本引き日の丸」の意匠を施した帆が印象的。右に三回転、逆に三回転半も回るという根曵の新しい技に注目です。東古川町の「川船」には、秋の川沿いの風景をイメージさせるススキや花が飾られています。その風情あふれる船の装いに反して、パワーとスピード感あふれる船回しがスゴイ!船歌に合せて船頭役の子供が網打ちをする姿も楽しみです。




 出島町「阿蘭陀船」は、鉄琴やドラムなど洋楽器を用いた囃子で、ひときわ異国ムードが漂っています。オランダの国旗がはためく黒い船の重さは4トンを超えるとか。その船体をあえて、ゆっくり回す技が見もの。根曵衆の情熱と底力が伝わってきます。小川町「唐子獅子踊り」は、東長崎の中尾地区に200年以上も伝わる獅子踊り。華やかで、どこか愛嬌のある親子獅子の息の合った舞いが見どころです。獅子踊りの前に登場する、子供たちの愛らしい唐子踊りも見逃せません。




 大黒町「本踊り・唐人船」では、その昔、唐人船が海を渡り、長崎に入港したときの風景を再現しています。唐人と日本人の友好を表したという踊りは、日舞とモダンバレエが融合したもの。ドラと鉦(かね)の音色が響く中、華やかな唐船が豪快な音をたてて回される様子も圧巻です。


 江戸時代、中島川のほとりに染物屋が多く住んだことに由来する紺屋町の名。「本踊り」の長唄の題目は「稔秋染耀六彩色(みのるあきそめてかがやくむつのいろどり)」。江戸時代、中島川で染めもの仕事をする人々の様子を再現するそうです。最後にご紹介するのは、その勇壮さと豪快さで一番人気を誇る樺島町の「太鼓山(コッコデショ)」です。5色の大きな布団(宝)を乗せた太鼓山を、屈強な男たちが宙に放る技は、鳥肌が立つほど感動的です。


 明日は、全国ニュースでも長崎くんちの様子が伝えられるはず。でも、生でご覧いただくのが一番。ぜひ、お出かけ下さい。



◎参考にした本/長崎事典~風俗文化編~(長崎文献社)


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