第198号【何度でも出かけたいグラバー園】

 長崎の夏の恒例となったグラバー園の夜間開園が今年も好評のようです。帰省した友人や親戚たちと夕涼みがてら出かけている姿をよく見かけます。久しぶりの故郷だからこそ、もっとも長崎らしい雰囲気と景色を味わってほしい。来客を迎える側のそんな思いが伝わってくる光景です。




 夜間開園の時間は夜9時30分まで。通常の夕方閉園の時期には見られない、ロマンチックにライトアップされた洋館や南山手の丘から見渡す美しい長崎港と市街地の夜景を楽しめるとあって、観光客もあとが絶えません。行くたびに新しい魅力が見つかり、長崎の歴史の奥深さに触れることができるなど、リピーターを飽きさせないのも大きな魅力です。当コラムでも何度も登場したグラバー園ですが、まだまだ紹介しきれていません。


 グラバー園には、新しいものがどっと押し寄せた居留地時代を反映して、日本初のものがいろいろ残されています。たとえば、アスファルト道路。これはトーマス・グラバーの息子、倉場富三郎が日本で初めて造ったものだそうです。また、そばには大きな石製のローラーが置かれているのですが、実はこれ、テニスコート整地用のローラーで、リンガー邸の庭園内に設けられた日本で初めてのテニスコートで使用していたものだそうです。




 また、江戸時代末期に造られた日本初の木造洋風建築グラバー邸(国重要文化財)では、天井裏に設けられた隠し部屋も見ることができます。グラバーは幕末、薩摩藩や長州藩といった倒幕派の若者を支援していましたが、いざという時に彼らをかくまうためのものだったと推察されています。


 ところで、今年はグラバー園が開園して30周年(1974年9月4日開園)を迎えます。時代を経るにしたがって『異国情緒・長崎』の象徴である洋館が減ってきたことが危惧され、その保存のために、グラバー邸があった南山手の丘に、市内に残っていた洋館を移築、整備してグラバー園が生まれました。現在では、国内外から訪れる年間の来場者数は約130万人とも言われ、長崎観光を代表するスポットに成長しました。




 30周年記念として素敵な催しがいろいろと予定されています。居留地時代にグラバー邸、オルト邸、リンガー邸などに暮らした人々の姿を写した、『古写真展~居留地生活した人々たち』(9/5~9/30)が行われます。また11月23日(祝)には、長崎ゆかりのオペラ、「マダム・バタフライ国際コンク―ルin長崎」の上位入賞者3名によるオペラコンサートも開催されます。


 「蝶々婦人(マダム・バタフライ)」に関連して、現在、旧リンガー邸では、戦前のヨーロッパで、「マダム・バタフライ)のオペラ歌手として名を馳せた「喜波貞子(きわ ていこ)」の特別展が行われています。公演に使われた衣装や小道具などが展示され、幻のオペラ歌手といわれる彼女の生涯を垣間見ることができます。オペラファン必見です。




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