第196号【夏野菜ことはじめ~トマト、トウモロコシ~】

 暑中お見舞い申し上げます。全国的に梅雨明けが早かった今年。長崎も平年より約1週間ほど早い今月11日に明けました。いきなりやってきた蒸し暑い夏に、早くも夏バテぎみの人が続出。こんな時こそ、旬の食材から元気をいただいて暑さに負けない毎日を過ごしたいものです。




 今回は、長崎がはじまりといわれる夏野菜を二つご紹介します。ひとつ目は、食卓を真っ赤な元気カラーで彩るトマトです。子供の頃、畑でもぎって食べたトマトは夏の太陽の匂いがしておいしかったですね。今ではスーパーなどで年中手に入り、私たちの毎日の食卓に欠かせない野菜になっています。




 最近ではトマトの赤い色をつくるリコピンという色素が、ガンを防ぐ効果があるということで話題になりました。また美肌づくりに欠かせないビタミンCや体内の余分な塩分の排出を助けて高血圧を予防するカリウムも豊富など、栄養面ではたいへん優れた野菜です。




 そんなトマトの原産地は南アメリカです。大航海時代にヨーロッパへ渡来したあと、17世紀にオランダ船が出島に運んできたのが日本での最初だといわれています。その頃は観賞用として栽培され、見た目のとおり、「あかなす」とか、「唐柿」などと呼ばれていたそうです。明治に入ってから食用の野菜として輸入されたそうですが、独特の臭いが日本人には好まれず、なかなか普及しませんでした。消費が増えたのは昭和30年代に入ってからで、この頃には改良され、気になるトマト臭がずいぶん緩和された品種になっていたようです。




 もうひとつの長崎ゆかりの夏野菜は、トウモロコシです。お米や小麦とともに世界の三大穀物のひとつです。トウモロコシの原産はアメリカ大陸で、アメリカ先住民の主要穀物として栽培されていたそうです。日本へはトマトよりも少し早く16世紀の南蛮貿易時代に、ポルトガル船によって長崎に伝えられといわれています。当時、長崎では「ナンバンキビ(南蛮黍)」と呼ばれていました。


 また、トウモロコシは今でも「トウキビ(唐黍)」とも呼ばれますが、その名からも想像できるように、中国から伝わったという説もあるようです。ただ、オランダ船が運んできたトマトを「唐柿」と呼んだように、とにかく当時の長崎では、海を渡ってきた珍しいものに対して、運んできた船の国籍にかかわらず「南蛮○○」「オランダ○○」「唐○○」というふうに称することがよくあったようです。余談になりますが、野菜の名に限らず、このような当時の人々のシンプル&アバウトな名前の付け方は、何かと深読みしがちな現代の歴史愛好家たちにいろいろと混乱を与えているような気がします。


 トウモロコシはビタミンB1、B2、Eとリノール酸を含み、動脈硬化の予防にいいそうです。また、ヒゲや、芯の部分も利尿作用や血中の脂肪を減らす栄養分が含まれているとか。焼きトウモロコシの香ばしい匂いは食欲をそそり、茹でたトウモロコシも甘くてジュシーな種実がたまらなくおいしいですよね。




 この夏も、トウモロコシやトマトなど旬の野菜を豊かな食生活と健康づくりにお役立てください。


 

◎参考にした本や資料/「からだによく効く食べもの事典」(池田書店)、「ながさきことはじめ」(長崎文献社)

検索