第166号【長崎の街路樹ナンキンハゼとイチョウ】

 11月下旬あたりにピークを迎えた各地の紅葉。皆さんは楽しまれましたか?長崎で紅葉といえば、島原半島の「雲仙」が有名です。ここは湯けむり漂う高原の温泉地で、先月中旬には見頃が終わり、葉を落として冬支度に入りました。今年はタイミングを逃しましたが、いつか当コラムでもご紹介したいと思います。

\(^▽^″)オ楽シミニ!






 山の紅葉は終わっても、平地にある街路樹の紅葉は、まだ楽しめるところも多いのではないでしょうか。長崎では、燃えるような赤に染まったナンキンハゼの葉が、街中の通りを風情豊かに彩って通行人を楽しませています。




ナンキンンハゼは中国原産の落葉樹。18世紀はじめ頃に、中国より長崎へ渡来し、全国に広まったといわれています。現在は、「長崎市の木」として街路樹に広く利用、市花のアジサイとともに長崎のイメージづくりに役立てられ、すっかり長崎の晩秋の風物詩になっています。病害虫に強く、同じ「ハゼ」が付く「ハゼノキ」とは違い、触ってもかぶれることはありません。


ナンキンハゼの丸みを帯びたかわいい葉は、夏場はイキイキとした緑色をし、それがフサフサと風にゆれる光景は、遠目にはイチョウのようにも見えます。とにかく長崎市街地のあちらこちらで見かける木ですが、観光がてらに楽しむなら、原爆資料館周辺(平野町)の通りが本数も多いのでおすすめです。




 ところで日本の街路樹でもっとも多く植えられている木をご存じですか?それはイチョウだそうです。イチョウは学校や公園、お寺や神社などでも、よく見かけ日本人にはとても馴染み深い木ですが、もとは中国原産です。またイチョウには雄と雌があり、雌の木には秋に銀杏(ギンナン)がなります。銀杏の実に養分をとられるからか、巨木になるのはたいてい雄の木だそうです。


長崎市には樹齢約300年の大イチョウがあります。樹高20メートル、幹周り3.9メートルの巨木(やはり雄)で、寺町通りの一角、「大音寺」の霊園内にそびえています。江戸時代からずっと長崎の街を見つめてきたこのイチョウもまた晩秋、美しい黄金色の姿を見せてくれます。




 最後に、イチョウの学名「Ginkgo biloba Linn.」のエピソードです。17世紀にオランダ商館医として来日したケンペルが、日本の植物を帰国後ヨーロッパで紹介した時、銀杏(ぎんなん)をローマ字書きで「Ging-yo」と紹介。それがどこかで誤って「Ginkgo」(ギンゴー)となり、その後、そのままあの著名な博物学者リンネが学名に定めたのだそうです。


※ 参考にした本

「長崎県文化百選~事始め編」 長崎新聞社

「大日本百科事典~ジャポニカ2~」 小学館

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