第165号【お諏訪のぼた餅食べて、ぶうらぶら】

 今月の長崎は、小春日和の穏やかな天気が多く、日中は修学旅行生や観光客の方々が、うっすらと額に汗しながら街を巡っている姿をよく目にしました。


 今回、ご紹介する諏訪神社周辺は、緑あふれる長崎市民の憩いの場。日中、温かな今頃の季節は、近所の幼稚園の子供たちがピクニックを楽しんだり、大人たちがお弁当を広げたりしているところをよく見かけます。しかもこの辺は、おいしい甘味処やさまざまな史跡などもあって、観光スポットとしても見逃せません。さっそく、そぞろ歩いてみましょう。




 スタートはおくんちで有名な諏訪神社の参道下から。その石段を登る途中に、「まよひ子志らせ石(まよい子知らせ石)」という石柱があります。明治12年に長崎県警に勤める警部さんたちが資金を出して建てたものです。当時、この近辺は神社へ参拝する人々でたいへん賑わい、迷子になる子供が度々いたそうです。迷子を見つけた人は、この石に子の名前や年齢などを書き、親を待ちました。今のようにテレビやラジオ、携帯電話のなかった時代、この石の効力はかなりのものだったそうです。




 諏訪神社で参拝し、境内から続く長崎公園へ入ると、明治18年創業の老舗「月見茶屋」があります。この店の名物は「お諏訪のぼた餅」。ツヤツヤとしたこしあんをまとった姿は、見るからにおいしそう。一人前5個とボリュームがありますが、ペロリとたいらげてしまいます。昭和レトロという言葉そのものの木造の店から東側を望むと「彦山(ひこさん)」が見えます。




 長崎では、彦山から出る月の美しさは有名で、江戸時代の狂歌師であり、長崎奉行所の役人として1年間在任した大田蜀山人(おおた しょくさんじん)が詠んだ「長崎の山の端に出る月はよか こんげん月はえっとなかばい」は、地元でよく知られた歌です。ただ上の句が「わいどんもみんな出て見ろ今夜こそ」というのもあり、いろいろいわく付きの伝説的な歌のようです。




 月見茶屋のある公園の広場には池があり、その中央に設けた石づくりの噴水は、公園などでの装飾用噴水としては、日本でもっとも古いものだとか。また、この広場には、明治期に外国人が長崎で過ごした日々を書いた小説「お菊さん」の著者で知られるフランス人小説家ピエール・ロティの顕彰碑もあります。


 長崎公園にはこの他、いろいろな史跡や碑があります。またの機会にご紹介しますので、どうぞお楽しみに。




※ 参考にした本

「長崎の文学」 長崎県高等学校教育研究会国語部会

「長崎県文化百選~海外交流編」 長崎新聞社

検索