第147号【近未来的廃墟の島 ~軍艦島~】

 灰色の海に重く垂れ込める雲。今にも一雨来そうな不穏な空気の中、船は一路軍艦島へ。 「軍艦島」は、長崎県西彼杵郡高島町にある端島の異名です。 島の周囲をぐるりと取り囲んだコンクリートの防波堤と高層の建築物からなる島影が、 戦艦「土佐」に似ているところから、「軍艦島」と呼ばれるようになりました。 ( ̄o ̄;戦時中、米軍ニ攻撃ヲ受ケタ事モ…。


 もともとは小さな無人島に過ぎなかった端島ですが、江戸時代に石炭が発見され、 佐賀鍋島藩が陶磁器つくりの燃料として石炭を採掘するため、人が住むようになります。 その後、三菱が鍋島氏から買取り(明治23)、八幡製鉄所へ製鉄用原料炭を供給するようになりました。


 端島は幅160m、長さ480mという小さな島で、最盛期には5000人を越える人がここで暮らしました。 これは当時の東京の10倍近く、世界一の人口密度でした。 住宅不足を解消するために、大正5年に日本最初の鉄筋コンクリート高層アパートが建設され、 以降も次々と高層アパートが建設され、果ては建物の上にまた建物を建築する等され、 独特の立体迷路のような空間を造り上げました。海上産業都市としての往時の活況ぶりが偲ばれます。


 やがて、燃料需要が石炭から石油に取って代わるエネルギー改革の合理化の波にのまれ、 昭和49年に閉山し、島は再び無人化しました。跡には昔の名残の高層建築群が残されました。 今なお、映画やドラマに登場したり、写真集が発行されたり、 人々の思いを掻き立てる不思議な廃墟の島は、何かを象徴するかのように、 激しい雨に打たれながら沈黙しています。




▲あいにくの曇り空。

灰色の海に浮かぶ軍艦島



▲日本最初の

高層アパート群



▲近くで見ると、

圧倒されるような迫力ェ

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