第131号【職人の心映え伝わる長崎刺繍】

 世界各地には民族性がしのばれる伝統刺繍がたくさんあります。 日本には総じて「日本刺繍」と呼ばれるものがあり、 主に着物や帯など和の装いや小物などに施され、その伝統は大切に受け継がれています。 その日本刺繍をベースに、江戸時代に中国等の影響を受けて生まれたのが今回ご紹介する「長崎刺繍」です。 ( ’o ’)ゴ存ジデスカ?


 長崎刺繍の代表的な作品はくんちの傘鉾や衣装に見る事ができます。 例えば万屋町の傘鉾の垂れで、海老や鯛などの魚を何匹も繍(ぬ)った「魚づくし」。 そして以前使用されていた桶屋町の傘鉾の垂れで「十二支」を刺繍したもの。 同じく東古川町の川船の船頭の衣装に施された「龍」などです。



▲東古川町(川船)、船頭の上着


 こよりや和紙で厚みや膨らみを作り、ときにガラスや金属を使って生み出す立体的な表情。 華やかな金糸・銀糸をふんだんに、シルク糸の光沢も存分に活かした独特の刺し方で、 龍や魚などの絵柄は今にも動き出しそうな躍動感にあふれています。 貿易で栄えた長崎の町の裕福ぶりが伝わる贅沢な美しさはまさに豪華絢爛。 (☆o☆)日本刺繍ヨリ、キラビヤカ!



▲同じく川船、船頭用


 現在、長崎でただひとり、その伝統を受け継いでいる嘉勢照太(かせてるた)さんにお話を伺いました。 「長崎刺繍は、絵師、彫師、摺り師がいる木版画に似て、絵師、繍師(ぬいし)、そして全体を仕立て上げる人がいます。 その中で絵師の力というのはとても大きかった。 いわば長崎絵師の力の上に成り立っていたという事がひとつ言えるでしょう」。 当時の長崎は海外の絵や文物を模写していた唐絵目利きをはじめ、川原慶賀に代表される町絵師たちも、 当時の日本にはない奥行き感のある絵を描くなど、爛熟した文化がありました。 そうした絵を元にさらに繍師が糸という素材から創造を重ねたのです。


 「100年や200年経ても魅力を発し続ける作品があります。 そこには職人の気骨、ものづくりに対するこだわりがあるんです」。 長崎刺繍は、効率一辺倒の時代からすれば正反対の位置にあり、本当に贅沢なものだとおっしゃる嘉勢さん。 現在は万屋町の「魚づくし」のレプリカづくりに取りかかっています。 ( ’∇’)「魚づくし」ハ長崎刺繍ノ代表的作品デス



▲嘉勢さんが制作している

万屋町「魚尽し」の鯛の下絵。


 「ありがたい縁でこの仕事に出会いました。制作は10年程かかる予定です」。 嘉勢さんは、熟達した職人の作品は見れば見るほど新しい発見があると言います。 一針一針に精魂込める職人の息遣いや心映えが伝わって来る長崎刺繍。 「皆さんに、よく見て楽しんでいただくことが何よりの応援です」とおっしゃっていました。 <(_ _)>貴重なお話、ありがとうございました。

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