第106号【幻想的な中国盆会】

 9月はじめ、唐寺・崇福寺(長崎市鍛冶屋町)では赤や黄色、 桃色の灯篭(ていろん=提灯)が飾られ、幻想的な雰囲気に包まれました。 伝統行事の「中国盆会(ちゅうごくぼんえ)」が行われたのです。これは中国式の盆祭り。 毎年、旧暦の7月26日から3日間、地元長崎や全国各地の華僑の人々が大勢集います。 (□o□)/崇福寺ハ、福健省北部出身者の菩提寺



▲期間中、朝夕読経が行われた

崇福寺(大雄宝殿)


 長崎市民はこの行事を「中国盆(ちゅうごくぼん)」と呼び親しんでいます。 正式には「普度蘭盆勝会(ぽーるらんぼんしょうえ)」というそうで、華僑の 人々は頭部分だけとって「ぽーる」と呼んでいます。もともと中国の方では、 「普度」を「プオトウ」と発音していて、それがのちに「ぽーる」と割り切っ た言い方になったそうです。(`ー´)長崎版ノ中国語?


 このお盆の間、崇福寺は異国のお盆を一目見ようとする地元市民や観光客で賑わいます。 境内は帰って来た御霊にゆっくりくつろぎ遊んでもらうためのお風呂や劇場などをデザインした小さな家と、金紙、銀紙でこしらえた高さ1m ほどの「金山」、「銀山」などが飾られます。 お堂の中は、果物や中国菓子など白い器に盛られた何種類ものお供物でいっぱいです。



▲金銀財宝を意味する金山・銀山


 この「ぽーる」では、先祖だけでなく「施餓鬼供養(せがきくよう)」といっ て、死後も苦しんでいる霊をはじめ、動物、植物、虫にいたるまで全世界の生 きものを対象に供養します。日本のお盆が先祖や身内の霊だけを供養するのに 対し、たいへん大きな意味があります。(/\)全テノ生物ニ感謝


 亡くなった人が、あの世でお金に困らないようにと、お金に見立てた長方形の紙を燃やし、 あの世へ送金するという独特の風習も見られました。 あたりには中国の線香の煙がたちこめ、日本のお盆では見られない光景が繰り広げられ、 まさに異国情緒・長崎といった感じです。


 華僑の人々が静かに線香をたむけて祈る中、境内をあちこち動き回るアマチ ュアカメラマンたちの姿が目立ってました。毎年この行事を撮影しているとい う地元の80代の男性は「昔は華僑の人々はみな中国の服を着て参加してたけど、 今はあまり見なくなったよ」と懐かしそうに話してくれました。


 この中国盆会の見どころは、何といっても最終日の夜。金銀財宝を意味する 約2百本の「金山」「銀山」を燃やし、お金を先祖に持たせて送り出す習わし です。午後10時頃、火をつけられた金山・銀山は、爆竹のはじける音と同時に 勢い良く燃え上がりました。こうして華僑の人々に手厚く見送られた御霊は、 きっと満足して帰ったに違いありません。(^o^)/~~マタ来年



▲最終日、燃え上がる金山・銀山


◎参考にした本/「時中」(長崎華僑時中小学校史・文化事誌編纂委員会刊)

「長崎事典・風俗文化編」(長崎文献社刊)

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