第84号【長崎ことはじめ(チューリップ&クローバー)】

 例年より早く訪れた春に、県下各地の入学式では満開の桜は既になく、まだ芽吹いたばかりのさわやかな新緑が新入生たちを出迎えてくれました。日増しに温かくなるこの時期、アスファルトやコンクリートが施されていない狭い路地や石垣、そして空き地などは、小さな草花たちの初々しい姿でいっぱいです。そんな素朴でありふれた“草ボウボウ“の風景も、自然のたくましさや美しさが感じられ、気持ちのいいものですよね。((o(^◇^)o))元気ガデル感ジ!


 そんな春から夏にかけての雑草の風景の中に必ずあるのがクローバー(Clover)です。クローバーといえば小学生の頃、幸運のシンボルといわれる「四葉」を必死になって探した経験があります。やっと見つけたのにいつの間にか忘れ、何年も経ってから辞書の間から出て来た、なんて経験のある方も多いのではないでしょうか。



▲四つ葉は探せませんでした。

クローバー(和名/白詰草)


 以前、このコラムでクローバーはオランダ船がガラス製品を長崎港に運ぶ際、輸送時の衝撃から守るためクッション代わりに使ったという話をしたことがあります。だから和名が「シロツメクサ(白詰草)」というのだと。江戸時代にはるばる日本に渡って来たクローバーの原産はヨーロッパで、そこでは四葉は新郎新婦の祝福に使われ、三葉はキリスト教の三位一体の象徴とされるなど、とても神聖なものとされているようです。日本人の私たちにとってクローバーはとても身近な植物だけに渡来種という事実は意外ですよね。

 さて今が盛りの花、チューリップ(Tulip)も、クローバーと同じくオランダ船で長崎に運び込まれたのが日本での最初だといわれています。原産は地中海沿岸、中央アジア。語源はトルコ人が頭に巻く「Tulipant(ターバン)」だそうです。確かに形がよく似ていますよね。(⌒^⌒)b ナルホド



▲庭先に可愛く咲いたチューリップ


 チューリップがトルコからヨーロッパに伝えられたのは16世紀の頃だそうで、その後オランダを中心に盛んに品種改良が行われ、17世紀になるとイギリスやフランスなどにも普及しました。この頃からチューリップはヨーロッパで異常なほどの人気を集め、盛んに投機売買されるようになります。これがいわゆる「チューリップ狂時代」です。当時の記録に、高値の球根1個とビール工場が交換されたという話が残っているそうです。まさに常軌を逸した話ですね。


 チューリップの生産量が増えて、庶民にも気軽に手が届くようになったのは19世紀に入ってからだそうです。オランダ船が出島へ運んだのが18世紀(1720年)頃だといわれているので、まだまだ貴重な時代に日本へやって来たのだということがわかります。(・・)/日本デノ本格的ナ栽培ハ大正時代カラ


 今では日本でも春の花としてたいへんポピュラーなチューリップ。童話の世界にもちょくちょく登場するからでしょうか、小さい子供が描く花もなぜかチューリップが多いような気がします。また愛らしいその姿は見ているだけで幸せな気分にしてくれますよね。縁あって大海原を旅し日本にやって来たクローバーとチューリップ。日本の春を美しく彩ってくれるこの植物たちに心から感謝します。

検索