第71号【松森神社の職人尽絵】
先週も登場した「諏訪神社」の近くには、学問の神様として名高い菅原道真公を祭る松森神社(まつのもりじんじゃ/上西山町)があります。諏訪神社ほどメジャーではありませんが、ここは長崎を代表する神社のひとつ。大きなクスの木が繁る境内を訪れると、近くの高校に通う男子生徒の姿がちらほら。そういえば受験シーズンでしたね。 ☆\\(^^ )合格祈願
▲松森神社正門
さて今回ご紹介するのは松森神社の「職人尽絵(しょくにんづくしえ)」です。江戸時代、またはそれ以前のさまざまな職人とその周辺の様子を板に彫り、絵画のように彩色を施したものです。[碁盤製造の図]、[菓子製造の図]、[鍛冶屋の図]、[瓦製造の図]、[医者・製薬人の図]など、計30枚に及ぶその板は当時の風俗を知る重要な史料として、県指定有形文化財にもなっています。 (・_・)/1枚のサイズは1.72m(横)×29cm(縦)
▲職人尽絵がはめこまれた本殿
この「職人尽絵」は松森神社が1714年に社殿改修を行った際に奉納されたもの。制作は、下絵を当時の長崎奉行所の御用絵師だった小原慶山(おはらけいざん)、彫刻は御用指物師(ごようさしものし)の吉兵衛、藤右衛門という人たちだといわれています。
さらにそれから百十数年を経た1832年には修繕を兼ねて彩色が施されていて、それを担当したのが当時の長崎画壇を代表する唐絵目利・石崎融思(からえめきき・いしざきゆうし)でした。江戸時代の腕利きの職人らの手によって作られた「職人尽絵」。当時からその細かな彫りと美しい彩色は有名だったようです。
こんなに貴重な代物だから、神社のどこかに大切に保存されていると思いきや、神社の本殿を囲む瑞垣(みずがき)の欄間(らんま)に、当初のままグルリとはめ込まれていました。参拝がてら誰でも気軽に見られるのはいいのですが、長年の野ざらし状態ですっかり色褪せてしまい、肉眼だとちょっと見ずらくなっていました。( ’_’)ジーーックリ見テネ
目を凝らし、1枚1枚じっくり見ていくと、これがなかなか面白いのです。たとえば[菓子製造の図]では、菓子師が作ったものを売っている様子、子供連れの女性が玩具を買っている様子、烏帽子をかぶった人が竹カゴにお菓子を入れて天秤棒で担ごうとしている様子、牛を連れた旅人らしき人が、お菓子を買おうとしている様子など、1枚の板に当時のお菓子作りにまつわるさまざまなシーンが描き出されています。こんな風にどの板も各仕事関連の複数のシーンが描かれていて、当時の社会風俗を垣間見る事ができます。(^^;)ゞ 解説文ガ付クト嬉シイ…
▲菓子製造の図
神社の売店にいた方によると、以前は彩色が落ちないようにガラス板をはめていたそうですが、かえって虫食いが起きやすくなるため、はずしたそうです。しかしそうすると天日や雨風にさらされてしまう。どちらにしても痛みは避けられないということでした。特別な手入れをするにしても文化財なので下手にいじれず、費用も相当かかります。きちんと手入れをして後世に残したいのは山々だけれど…といった状態のようです。ホントに何かいい方法はないものでしょうかね。 α~ (ー.ー") ンーー・・・
※参考資料/畑田信雄著「長崎の職人尽彫りもの絵」、長崎文献社発行「長崎事典」